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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いの吐露と現実と
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女を介抱してやれるのは、彼女のことを少なからず分かっている人じゃないと駄目でしょう」


いじらしい彼女の零した本音を、他の誰でもない自分だけは、既に耳にしている。『甘えたくなったら、彩斗に甘える。たぶん弱音だって吐くし、泣いちゃうこともあるかもしれないけど、絶対に抱え込まない。……アタシなんかのことを分かってくれてる、たった1人のパートナーだから。だから、大事にする。何かあっていちばん頼れる人が、彩斗しか居ないもん』


「その上で、彼女の悲運めいた境遇に同情しているんだ。あの子を支えてやれるのは自分しか居ない、パートナーになってやれるのも自分しか居ない──単なる同情とお人好しから出た感情だけれどもね。少なくとも、その悲運から逃がしてやろうという気ではいるよ。そうでなければ、あの子が何のために自分をパートナーにしたのか、分からなくなっちゃうでしょうからね」


自分の世界は、1度ならず2度までも変貌した──胸の内で、そう零す。
そもそも自分が生家を離れて武偵になったのは、単なる我儘な子供の我儘でしかなかったのだ。日常に蔓延っていた無味乾燥を一掃するための、そうして同時に現実逃避を果たすための、押し切りに押し切って、突き放すように手から零した由縁と過去──それでしかなかったのだ。

そうして自分は武偵になった。生家とも世俗とも異なった感じを実感して、4年の歳月をそこに費やすまでに至った。独特な環境の中で感受した知識とか能力とか、構成した人間関係とかを思えば、対価にしたこの4年も無駄にはなっていないのだろうと思える。むしろ尾ひれを引いた結果、この現状に至っているのだ。始業式の日に、またもや世界が変貌したのだから──。


「……実は神崎さんは、転校したての頃は悪く言われてたのだ。銃剣技の天才なのが裏目して、誰も彼女に動きを合わせられなかった。直情的な神崎さんも神崎さんで、パートナー役の子に食いかかっちゃうことも多かったから、周囲からは短気で我儘って思われてたみたいなのだ。周りから浮いてることもあったし、あまりお友達って呼べる子は居なかったみたいに思うのだ」


文はまた自分を横目で一瞥しながら、淡々とした中に悄然とも取れる色を滲ませていた。
「でも、」と彼女は続ける。それは弾けた泡沫のような声に聞こえた。「神崎さん、如月くんにはそんな素振りは微塵も見せないし、むしろ如月くんに会ってから、性格が少しだけ穏やかになった気がするのだ。……たぶん、如月くんなら理由は分かってるかもしれないけど」

自分は文の告白を聞く今の今まで、神崎・H・アリアという眇たる一少女の過去を知らなかった。そうして同時に、その告白と彼女の態度とを鑑みると、文の言う理由とやらも分かる気がしてくる。それは実に単純明快な見え透いたもので、人間の心理作用
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