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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いの吐露と現実と
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したら夜に終わるかもしれないけど、それはそれで大丈夫なのだ?」と彼女はこちらを見上げてくる。


「うん、構わないよ。遅くなるなら身内に連絡はするしね。陽も延びたし、食堂とか購買も空いてるかな……? まぁ、アリアが好きな……ほら、あのお饅頭……ももまん程度は買えるでしょう」
「神崎さん、ももまんが好きなのだ? それなら購買に売れ残りがあったと思うから、今からでもたぶん売ってるのだ。いくつ残ってたかは忘れちゃったけど、善は急げでレッツゴーなのだ!」


片腕を可愛らしく掲げた文を見て、アリアは「本当?」と嬉しそうに零した。なるほど、どうせなら買ってしまえばいいのだ。彼女にとっては、どちらに転んでも損はしないだろう。
「じゃあ、はい、これ。あげる。お釣りはいらないから」そう言って、自分は財布から取り出した1000円札をアリアに手渡した。1000円ならば、あるだけは買えるだろうと思う。


「えっ、でも……。悪いからいいよ」
「ほら、早く行っておいで。この間に売り切れちゃったら本末転倒でしょう?」
「うん、じゃあ……ありがと。ちょっと行ってくる」


気恥ずかしそうに笑いながら、アリアは自分たちに小さく手を振って部屋を後にした。彼女の軽快な足取りと揺れる髪、小さな背姿を見送ってから、一息ついた自分はまた文の方に向き直る。
話が一段落したところで、彼女はちょうどベレッタの整備を始めるところらしかった。点検に使うような工具もろもろを引き出しから取り出して、傍らに据え置いてある照明を点けている。

まずは弾倉を抜いて手元に置くと、文は安全装置を解除してから撃鉄を起こした。そのままスライドを外すと、銃の内部機構がありありと見て取れる。ここから分解していくのだろう。
そうして「……実際のところだけど」と、横目でこちらを一瞥しながら呟く。「如月くんは神崎さんのこと、どう思ってるのだ? あややにはパートナー以上で恋人未満っていう風に見えたのだ」そう告げる彼女の声色は、先程の無邪気な調子とは少しだけ違って、大人びていた。

そんな一様の悠然とした調子と紺碧の瞳とを見聞きしているうちに、次第次第に自分の脈搏が段階的に速度を上げていくように思われてくる。泰然としていたはずの心臓が突発的に早鐘を打ち始めて、その理由が彼女の言葉と自分の意識に由来していることだけは、とうに分かっていた。
詰まった咽喉を無理やり震わせながら、「そうねぇ……」と切り出して照れ笑いを零す。


「あの子を庇護してやれるのは自分のみだろう、と思ってるよ。生家のことを語らない、両親の居ないアリアにとって、他に頼れる人なんて限られているだろうからね。気位に満ち満ちた彼女の性格からしても、あの子は1人で抱え込んでしまうタイプじゃないのかな。そうなった時に彼
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