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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いの吐露と現実と
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たものを文は請負ってくれた。そうしてそれは、自分の期待通りの結果に収束してくれた。
彼女の装備科生としての能力は、現在はおろか当時から見ても非常に高い。その技量を見込まれて教務科からはAランクの肩書きを受けているし、彼女を頼る生徒も多く居るのだと聞く。
とはいえ、その上で彼女に些かの問題があることは、 自分たち周囲も承知していた。文の実力はSランクにも届くだろうと言われているのに、彼女がAランクの理由がそこにあるのだ。
それこそが、様々な問題行動──例えば、キンジの愛銃であるベレッタM92FSが身近な例だろうか。この銃に元来、バースト機能は存在しない。それを彼女特有の技力でもって違法の改造を施してしまうところだとか、相場を無視した料金の支払いを提示するだとか、そんな問題行動を教務科も知っているからこそ、叱責の意を多分に込めてランクを落としているのだろう。
それも含めて更には、とうとう──当然の帰結かもしれないけれど──平賀文は、その苗字から推して、かの平賀源内の子孫ではないかと未だに噂されているのだ。平賀源内は江戸時代の名工として知られている。彼女のその技量は、まさに彼を思わせるに相応しいものに相違なかった。問題こそあれど、その実力は申し分ない。これこそ自分たちが彼女に抱く共通認識だろう。
「君はずっと変わらないね。未だに自分の中では、ぼったくりの俊才技師だよ。だってさぁ、初めて依頼した時、請求書の額を見たら驚いたもの。当時は入学して間もないし、ある程度の資金しか持ち合わせてなかったからね。しかも、切り崩したくない資金だよ? 結果してこれが如月彩斗の最初の借金、ってことになったんだ。最初で最後なら万々歳だけれどもね。ふふっ」
壁際の作業テーブルに肘を掛けながら、自分は口元から穏和の2文字を吐いた。
「借金して、その後はどうしたの?」隣から興味ありげにアリアが訊いてくる。
「依頼を解決して、そのお金で支払ったよ。資金には微塵も手を付けずにね。その後も、成績向上と資金増加を目標にして、自分なりに昨年度を過ごしてきたつもりではいるかな。前者も結果として見事に表れてくれたし、後者の資金も今のところは不自由が無いね。気楽に生きれるよ」
両手を組んで磊落に笑みを零しながら、自分はそうアリアに返事した。彼女も面白そうに「へぇ、そうだったんだ」と頷いてくれる。「強襲科の総依頼解決数が1位の背景、これなのね」
事実の裡面──ある種の秘密を垣間見たことが、アリアにとって何かしら面白かったのだろう。納得したように笑いかけてくる眦は、赤紫色を隣にして、いつもにも増して下がっていた。
「それに比べて、今年度はどうなるのかしら。先月の《武偵殺し》の件で、バスジャックとハイジャックは解決済みって認可されたでし
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