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蒼と紅の雷霆
蒼紅:第一話 兄弟
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施設から逃げ出した少年達の生活はやはりと言うべきか、楽しい物とは断じて言えなかった。

食べ物は施設から持ち出してきた物があるが、育ち盛りの少年が2人となるとすぐに底をつく。

野生の動物を第七波動で仕留めて、それを食べたり飲み水を泥水で代用したこともざらだった。

それにより体調を壊したりすることもあったが、少年は連れ出した少年を見捨てることはせず、連れ出された少年も自分を連れ出してくれた少年を見捨てることはしなかった。

次第に2人の間に兄弟としての絆が芽生えるのも当然である。

「兄さん…」

「ん?」

「今日は寒いね…」

第七波動で焚いた焚き火で冷えた体を暖めながら連れ出された少年の弟が呟く。

「冬が近いからな…そろそろ何か食い物を…っ!!」

足音が聞こえて振り返ると、武装した青年が姿を現した。

「ここにいたのか…蒼き雷霆の被験者の2人は…」

「っ…!!」

青年に対して少年は後ろの弟を守るように青年を睨んで紅き雷霆の力を放出する。

「ほう…これがあの施設で発見されたと言う蒼き雷霆から派生した…紅き雷霆…まだまだ荒削りだが、制御出来ているとは…末恐ろしいタレント(才能)だ。」

「誰だお前…っ!!」

殺意を隠そうともせずに青年を睨む少年。

「まるで血に飢えたビーストだな…私は君達を保護しに来たのだ。」

「何…?」

「私が君達のいた施設に向かった時には既に壊滅していたのでね。施設から逃げ出した君達を今まで捜していた。私の名前はアシモフ…武装組織・フェザーのリーダーだ。フェザーの目的は君達のような能力者の人権を守ることだ。」

「能力者の…人権を守る…?そんなこと信じられるか!!」

アシモフと名乗った青年に向けて放たれた雷撃だが、アシモフはそれをかわすと少年との距離を詰めた。

「やはり度重なる人体実験で人間不信となっているようだ…すまないが眠ってもらう」

「ぐふ…っ!!?」

急所に一撃を叩き込まれて気絶した少年。

「兄さん!!」

兄と慕う少年に駆け寄る弟の姿を見てアシモフは安心させるように言う。

「ノープロブレムだ。彼は気絶させただけだ…あのまま暴れられては皇神に感付かれるかもしれなかったんでな…聞いていただろうが、私は皇神とは無関係だ。私についてくれば君達の身の安全は保証しよう」

「本当に…?」

「約束しよう」

差し伸べられた手を少年は掴み、アシモフは気絶している少年を抱えて拠点に戻るのであった。

「ん…」

「兄さん…起きたんだ」

「お前…ここは?」

「アシモフが僕達にくれた部屋だよ」

その名前を聞いた少年は表情を険しくして起き上がろうとするが、弟に止められた。

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