第百二十話 王都攻略その一
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第百二十話 王都攻略
久志達は軍船に乗ってナイル川を遡りつつ古王国の王都であるメンフィスを目指した、その途中だった。
ナイル川流域にある諸都市を攻略するなり降すなりしていった、軍勢は川からだけでなく川添いそれも両端から進軍させていた。
その為街の攻略も容易だった、それでメンフィスまでだった。
久志は順調に進めるかとふと思った、だが。
川の上流の方を見てだ、すぐにその考えをあらためてこの言葉を出した。
「好事魔多しってな」
「そうだ、敵はまだ水軍を出していない」
芳直がその久志に応えてこう言ってみせた。
「だからだ」
「まだまだな」
「今ははじまったばかりだ」
「メンフィスまで遠いしな」
「敵も準備をしているだろう」
「俺達に水軍を向けるな」
「そして陸からもな」
川からだけでなく、というのだ。
「来る筈だ」
「そうだよな、やっぱり」
「術を使う者が多い軍勢がな」
「迎撃に来るな」
「古王国との戦はこれからが本番だ」
そうなるというのだ。
「だからだ」
「今は順調でもな」
「これでいけると思わないことだ」
「そうだよな、じゃあな」
「気を引き締めてだ」
「先に進まないとな」
「そうだ、だがだ」
「だが?」
「古王国は領土は広いが人がいるのはだ」
その地域はというと。
「ナイル川流域だけだからな」
「周りは砂漠だからな」
「街もない」
「だったらな」
「砂漠に入る必要がない、あくまで進むのはだ」
「このナイル川流域だけでな」
「考える必要はない、むしり砂漠に入れば」
そうすればというと。
「敵の駱駝騎兵や軽騎兵に狙われてだ」
「やられるからな」
「だからだ」
そうなってしまうからだというのだ。
「こうしてだ」
「川を遡っていくべきだな」
「そうだ、このままな」
「戦略は一本ってことだな」
「完全にな、ではな」
「ああ、敵の主力と戦うことを考えながら」
「先に進むぞ」
こう久志に言った。
「補給も楽だしな」
「ナイル川を使えてな」
「川を使えるとな」
「運べる物資の量が多いしな」
「行き来も楽だ」
こうした要素が揃っていてだ。
「だからお前のまず三角州、河口を制したな」
「その戦略は正しかったな」
「若し川を考えずにな」
ナイル川、この川をというのだ。
「無闇に攻めていたらな」
「こうはいかなかったよな」
「とてもな」
「ただメンフィスを目指していたら」
「こうはいかなかった、いい着眼点だった」
「そうなんだな」
「今回はな、だからこれからもな」
芳直はさらに言った。
「川や湖のことはな」
「常に念頭に入れてか」
「そのうえでだ」
そうしてというのだ。
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