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戦国異伝供書
第五十五話 足利将軍その二

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「よくありません、ですから」
「だからですな」
「やがては」
「天下が穏やかになれば」
「都をしかと治め」
 そしてというのだ。
「それからです」
「あらためてですね」
「都を元の立派な姿に戻し」
「朝廷も安らかに座され」
「公方様もですな」
「そうです、公方様が再びです」
 足利将軍がというのだ。
「天下を無事に治められる」
「そうした状況にですな」
「戻されますな」
「殿の武で」
「毘沙門天のお力で」
「そうします、毘沙門天の武はただの武ではありません」 
 政虎はそう確信しているのだ。
「それは法の武です」
「御仏の降魔の武であり」
「それで、ですね」
「天下も安らかにする」
「泰平にしますね」
「天下に必要な武はそれです」
 法の武だというのである。
「それがわたくしにはあります、ならば」
「その武で天下に泰平をもたらされ」
「そしてですな」
「それからさらに」
「そうお考えですね」
「そうです、ではそのことをこれより」
 政虎は家臣達にさらに言った。
「朝廷と公方様にお話しましょう」
「はい、ではdす」
「我等もお供します」
「殿に」
 家臣達もこう答えた、そしてだった。
 まずは朝廷に参内した、帝ということであるのでそちらを第一にと考えてのことだ、それでだった。
 公卿の筆頭と言っていい近衛にも会った、近衛は政虎の話を聞くと感心してそのうえで彼にこう言った。
「これだけの贈りものとは」
「いえ、これはです」
「ほんのと言われるでおじゃるか」
「左様です」 
 政虎は近衛に確かな声で答えた。
「ですからお気に召されずに、そして」
「朝廷をでおじゃるか」
「わたくしは必ずです」
「かつての様にでおじゃるか」
「はい、必ずです」
 まさにというのだ。
「雅なお姿に」
「してくれるでおじゃるな」
「そのことを約束します」
 こう言うのだった。
「ここに」
「そこまで強く言われるとは」
 近衛は政虎のその言葉に感服した声で述べた。
「麿も感動したでおじゃる、では」
「はい、関東管領として」
「東国をでおじゃるな」
「安らかにし天下全体もです」
「元の姿にでおじゃるな」
「戻します」
 このことも約束するのだった。
「そうさせて頂きます」
「ではそのことを帝にもでおじゃる」
「お話して頂けますか」
「上杉殿のお心は誠でおじゃる」
 近衛は政虎に確かな声で答えた。
「麿にもそれがわかるでおじゃる」
「左様でありますか」
「だからでおじゃる」
 この度はというのだ。
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