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戦国異伝供書
第五十五話 足利将軍その一

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               第五十五話  足利将軍
 政虎は途中比叡山にも入りそこで仏典等を読ませてもらったり山の中の多くの建物を見せてもらった、そのうえで家臣達に話した。
「この度のこともです」
「殿にとってですね」
「かけがえのないことですね」
「そうなりましたね」
「はい、長い間一度でもです」
 それこそというのだ。
「比叡山に入りたいとです」
「思われていましたか」
「以前より」
「そして今ですね」
「それが適ったのですね」
「そのことに深い喜びを感じています」
 政虎は家臣達に笑顔で答えた。
「まさに」
「左様ですか、ではですね」
「このことも忘れず」
「そしてですね」
「これより」
「あらためて」
「山城の国に入り」
 そしてというのだ。
「都に入りましょう」
「はい、それでは」
「いよいよですな」
「都に入り」
「そのうえで」
「公方様にお会いしましょう、それだけでなく」
 政虎はさらに話した。
「朝廷にも参内し」
「そしてですか」
「公卿の方々にもお会いして」
「そして帝にも」
「是非ですか」
「そう考えています、その為に多くの贈りものにです」
 それにというのだ。
「銭もです」
「それもですね」
「持って来ましたからな」
「公方様、そして朝廷への寄進」
「その為にも」
「そうです、それでなのですが」
 政虎は家臣達にさらに話した、もう高野山は降りていてそうしていよいよ山城の国に入ろうとしている。
 その中でだ、家臣達に言うのだった。
「我等は佐渡の金山があり」
「塩に青苧もありますし」
「海の港での商いもあり」
「我等は銭があります」
「それが助かっていますな」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「我等はです」
「多くの贈りものを持ってこれましたな」
「金にしても」
「ではそうしたものを公方様と朝廷に贈り」
「そのうえで」
「喜んで頂きましょう」
 こうした話もしてようやく山城の国に入った、そこから都まではすぐであり一行は無事都に入ることが出来た。
 だが都を見てだった、上杉家の者達は皆眉を顰めさせた。
「噂には聞いていたが」
「これはまた」
「随分と荒れていますな」
「壁も家も」
「何もかも」
「人も少ないですね、やはり」
 政虎も馬上で見つつ話した。
「応仁の時からです」
「あの戦乱からですな」
「細川様と山名様が争った」
「あの戦からですな」
「都は荒れたままですな」
「あの時から」
「はい、都がこの様に荒れていますと」
 これはと言うのだった。
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