第百十九話 ナイル川へその十三
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「本当にね」
「注意しないとな」
「川に落ちても危ないし」
「水を手に入れるにしてもな」
「確かにこの国はナイル川あってのもので」
「かなりの恵みをもたらしてくれていてな」
「おいら達も使えるけれど」
それでもというのだ。
「用心はしないとね」
「いいことばかりじゃないか」
「気をつけるところは気をつけないと」
「痛い目を見るってことだな」
「そういうことだよ、モンスターがいてね」
「鰐もいるか」
「鮫はいないけれどね」
「そういえばこの浮島淡水だけれどな」
海水はないがとだ、久志は淳二の今の言葉であることに気付いた。
「湖には鮫がいてもな」
「地中池とかにね」
「川にはいないな」
「流れのせいだと思うよ」
「流れが急だとか」
「うん、この浮島の鮫はね」
「入らないか」
「逆流をどんどん遡るとか」
そうしたことはというのだ。
「お魚にとっても辛いしね」
「それはな」
実際にとだ、久志もわかることだった。
「鯉のあれだってな」
「それをあえてするから言われてるからね」
「そうだよな、それじゃあな」
「鮫だってね」
「でかい湖にいる方がいいか」
「下手に川に入るよりね」
そこを遡る方がというのだ。
「むしろね」
「それでこの浮島にでもか」
「湖に鮫はいても」
所謂淡水生の鮫である、この種類の鮫は久志達が起きた世界でも存在している。アマゾン川には淡水生のエイもいる。この川は大河で流れが穏やかなのだ。
「それでもね」
「川にはいない」
「それでその代わりね」
「鰐がいるんだな」
「そうだよ、考え様によってはもっと怖いかな」
「鰐の方が頭いいしな」
鮫よりもだ、これは爬虫類と魚類の違いの一つだ。
「それに潜んでいてな」
「待ち伏せもしてるしね」
「あと動きもな」
「鰐の方が早いし陸の上にも上がれるし」
ただし動きはかなり鈍くなる、やはり鰐は水の生きものなのだ。
「尻尾の一撃もあるし鱗は堅いし」
「鮫よりずっと厄介だな」
「そうだよ、そのことはね」
「覚えておいておかないとな」
「それで川を進んでいこうね」
「そういうことだな、何か鰐の方がな」
ここまで話してだ、久志はあらためて思った。
「モンスターより怖いな」
「そうかも知れないね」
淳二もそのことを否定しなかった、そうした話をしつつだった。久志は軍勢をアレクサンドリアで休ませてからだった。
彼等を船に乗せてそうしてアレクサンドリアからナイル川を遡って兵を進めた、そして三角州から大河に出てだった。
兵を進ませた、敵の首都メンフィスを目指して。
第百十九話 完
2019・6・23
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