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ある晴れた日に
71部分:優しい魂よその六
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優しい魂よその六

「馬鹿だよな」
「しかも只の馬鹿じゃねえよな」
「どう見てもな」
 こう囁き合うが野本自身は全くわかってはいなかった。
「わかってないしね。どう見ても」
「どういう頭の構造しているのかしら」
「もう一度聞くわね」
「はい」
 また正直に応える野本だった。
「今はしていないのね、ギャンブルは」
「そうですけれど」
「それだといいわ」
 それを聞いてまずは納得した顔で頷く江夏先生だった。
「それだとね」
「何でいいんですか?」
 やはり彼だけがわかっていなかった。
「よくわかんないんですけれど」
「校則。わかってるかしら」
「校則?」
 校則と聞いても首を捻るだけである。
「そういや一度も読んでないです」
「ギャンブルは禁止よ」
 ここで先生の顔が少し厳しいものになった。
「ちゃんと書いてるわよ、校則にね」
「そうなんですか」
「そうよ。中学の時はどうでもいいっていうかどうしようもないけれど」
 学校が違うから当然のことである。学校が違えば何をすることもできない。
「うちじゃ絶対に駄目だから。それはわかっておきなさい」
「そうだったんですか」
「煙草もね」
 これも言い加えてきた。
「これはわかるわよね」
「ああ、それはまあ」
 流石にこの程度はわかっていた野本だった。
「勿論ですよ」
「そうだといいけれど」
「一応校則は守ってるつもりですよ」
 全く信用できないコメントだった。
「俺だって。煙草は嫌いですし」
「嫌いで結構よ」
「そういうことは」
「それでギャンブルはしないわね」
「はい」
 この返事はしっかりしたものだった。
「それはもうしません」
「宜しい」
「負けてばっかりでしたし」
「だろうなあ」
「こいつが勝てるわけないわよ」
 また皆が後ろから話を聞いて言う。彼がそういったものに強いとは誰も思わなかったのだ。理由は簡単で彼の頭が悪いと皆見ているからだ。
「っていうか中学生でパチンコって」
「何やってるのよ」
「とにかくもうギャンブルはやりませんから」
「やったら停学よ」
「ちぇっ、厳しいなあ」
 やはり反省等している素振りはない。こういうところがやはり野本だった。
「まあポーカーとかならいいか。金かけないでな」
「じゃあ後でやる?」
 桐生がここで野本に言ってきた。
「何なら付き合うけれど」
「テントの中でか」
「どうかな。それで」
「そうだな。いいよな」
 結構乗り気の野本だった。
「コーラでも飲みながらな」
「お酒も駄目だからね」
 また江夏先生が言ってきた。
「わかってるわよね。それも」
「わかってますって。けれど何かあれですね」
「今度は何かしら」
「いえ、花火ですけれど」

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