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ある晴れた日に
706部分:冬の嵐は過ぎ去りその六

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冬の嵐は過ぎ去りその六

「本当に遂に」
「ここが正念場ね」
「そうだよな」
「緊張するな」
 野茂は身体がガクガクとしていた。
「本当に」
「ここで取り逃がしたら」
 凛はふと不安を覚えた。
「まさかとは思うけれど」
「それはないわ」
 怯えたような顔になっていた彼女に明日夢が言ってきた。
「それはね」
「ないの?」
「ええ、ないわ」
 あえて断言してみせたのである。
「だからね。安心してね」
「安心していいのね」
「未晴助けたいわよね」
 まるで剣を持っているようだった。その顔で凛に対して問うたのである。
「絶対に」
「そうよ」
 返答はもう一つしかなかった。
「何があってもよ」
「それだったらね」
 後ろからだった。凛の両肩に自分の手をやってそのうえで言ってきたのである。
「いいわね」
「落ち着けっていうの?」
「そうよ」
 何時になく優しい声だった。
「何があってもね」
「そうよね、今はね」
 明日夢の言葉に頷く凛だった。幾分落ち着きも戻っていた。
「いいわね」
「ええ、だからね」
「咲も何か」
 そして咲もだった。
「今は緊張するわね」
「大丈夫よ」
 明日夢は彼女にも告げた。
「今はね」
「落ち着けばなのね」
「絶対に上手くいくから」
 こう言うのである。
「だからね」
「上手くいくのね」
「いくわ」
 間違いないというのだ。
「だから。いいわね」
「ええ、そうよね」
 彼女も明日夢の言葉で頷くのだった。
「落ち着けば」
「エレベーターはもうすぐだね」
 桐生はそれを見ていた。
「来たらいよいよだね」
「加山君」
 竹山は一際大柄な彼に声をかけていた。
「いいね」
「僕がなんだね」
「彼を後ろから捕まえるんだね」
「うん、そうしたらどうにもなるから」
 こう言うのである。
「あとは竹林さんはね」
「未晴はだ」
 これは正道の言葉である。
「俺が絶対に」
「君に任せるから」
 こう言ってきたのは桐生である。
「それでいいね」
「任せてくれ」
 そして彼もそれを受けた。
「何があってもだ」
「一瞬だよ」
「一瞬か」
「一瞬だよ」
 桐生はこのことを念押ししてきた。

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