第三章
[8]前話
「着いたで」
「あっ、着いたか」
「そや、見えてきたわ」
その淀川がというのです。
「ほなもうすぐしたらな」
「淀川にやな」
「入れるからな」
「ほなそれで頼むな」
「これからな」
こうしたお話もしてでした、そのうえで。
良太郎は川の土手の近くで自転車を止めるとでした、草魚が入っている水槽を担いで川の方に向かってです。
草魚を川に放しました、すると草魚は川の中に入ってから良太郎にお顔を向けて笑顔でこう言いました。
「おおきにな、お陰でや」
「淀川に戻ってこれたな」
「わしのお家にな」
喜んでいる声で言うのでした。
「晴れてな」
「それは何よりやな、ただな」
「ああ、お池は快適でもやな」
「暮らしやすかったらな」
それならというのです。
「ずっといてもよかったやろ」
「いやいや、それでもや」
「それでも?」
「あそこはわしの家やないからな」
「淀川やないからか」
「そや、それでや」
草魚は良太郎にさらにお話しました。
「わしの身体にはちと狭かったしな」
「あのお池小さいしな」
「それでや、餌はあってもな」
それでもというのです。
「淀川に移りたいと思ってたんや」
「そういうことやったか」
「人もそやけど魚にも家があってな」
草魚は良太郎にさらにお話しました。
「身体の大きさとかに相応しい家もあるんや」
「草魚には草魚のお家があるか」
「人間には人間のな」
「それぞれの大きさのか」
「そういうことや、それで今回はな」
良太郎を見つつです、草魚はさらにお話しました。
「自分のお陰でな」
「お家に戻ってこられたな」
「お礼は何もあげられんけどな」
「気持ちだけで充分やで、けどな」
「もう二度とやな」
「お家離れたらあかんで」
「自分に相応しいお家からやな」
草魚もわかっている返事でした。
「そやな」
「そうや、そこは気をつけていくんやで」
「今回は反省したわ、ほなな」
「ああ、もうな」
「わしのお家から離れんわ」
そこが自分にとって一番いいからです、良太郎にこのことを話してでした。
草魚は淀川の中に戻りました、良太郎はそれを見届けると水槽と釣り道具を持って自転車に戻りました。そうして別の場所で釣りをしにいくのでした。
草魚 完
2019・4・10
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