第三章
[8]前話
王昭君は世を去った、その時にこれで、と一言漢の言葉で呟いた。単于はその彼女を埋めたがその地がだった。
やがて青い草が生える様になった、周りには白い草しかない中で緑のその草達は目立った。その草達を見てだった。
単于は周りの者達にこう話した。
「これは匈奴の草の色ではないな」
「はい、これは漢ですね」
「漢の草ですね」
「その草の色ですね」
「そうだな、妻の国の草だ」
漢のというのだ。
「まさにな、妻は世を去ったが」
「漢、故郷のですか」
「そちらのことをずっと思われていて」
「それで、ですか」
「世を去ってからもその想いが残っていて」
「草の色を変えたのですか」
緑、漢の草の色にというのだ。
「そうなったのですね」
「そうだ、そして魂はな」
王昭君のそれはというと。
「おそらくな」
「戻られたのですね」
「故郷である漢に」
「そうなったのですね」
「そうだ、ではこの草は羊や馬達には食わせない様にしよう」
単于はその草を見て周りの者達にこうも話した。
「そうするとしよう」
「あの方の思いは大事にしないといけないですね」
「ずっと漢の方を見ておられました」
「それだけ想われていましたから」
「それならば」
「絶対にですね」
「この場はこのままにしておこう」
こう言ってだ、単于はその地の緑の草を馬や羊に食べさせることを禁じた。そうしてそこにある草達は何時までも緑のままだった。
この青塚の場所は今も北の地にある、フフホトという街にあると言われそこは今は観光客達が常に来ていて王昭君と単于が馬に乗っている像もある。王昭君はこの世を去るまで故郷に帰ることは出来なかった、所謂政略結婚で後宮の中にいた女の一人から異郷の王即ち単于の妻となった。常に望郷の念にかられていたというがその想いはこの世を去ってから適ったのであろうか。それが匈奴の白い草を緑に変えたのであろうか。そう思うと青塚が今も残っていることはどれだけ素晴らしいことであろうか。そう思いここに書き残しておくことにした。一人でも多くの人が読んで頂ければ幸いである。
青塚 完
2019・2・13
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