第二章
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「一体」
「はい、今各国の代表がウィーンに集っています」
「オーストリアの帝都にか」
「そうしています」
「それでこれからの欧州について話をしているか」
「はい、ですが」
「国が多ければそれだけ口も多い」
ナポレオンはこう看破した。
「そうなる、ではだ」
「では、ですか」
「会議は進まない、そしてだ」
項垂れつつもだ、ナポレオンの目には光が宿っていた。そうして言うのだった。
「その間にだ、私は再び」
「まさか」
「そのまさかだ」
こう言うのだった。
「この島を出てだ」
「そうしてですか」
「フランスに戻るぞ」
「皇帝の座にですか」
「そうする、いいな」
「そうされますか」
「私は死ぬまで皇帝だ」
そうだというのだ。
「だからだ、諦めていなかった」
「この島におられても」
「ここぞという時に島を出てだ」
そうしてというのだ。
「皇帝に戻るぞ」
「わかりました」
従者ハナポレオンに応えた、そして彼は実際にだった。
各国がウィーンでそれぞれの思惑や利害をぶつけ合っていてそこに神経を集中させているのを見てだった。
エルバ島を出てフランスに向かった、そこでフランスに戻っていた王家やその周りの者、新聞はこぞって彼を攻撃したが。
国民は彼が帰ってくると聞いて口々に言った。
「そうか、戻って来られるか」
「この国に」
「是非戻って来てくれ」
「俺達は待っている」
「やっぱりあの人しかいない」
「フランスにはな」
ナポレオンのカリスマに心底惚れていたが為にこう言ってだ、彼がフランスに戻って来るのを待っていた。そしてだった。
彼がフランスに上陸すると次から次にだった。
フランスの民衆も軍隊も彼に集った、それでだった。
彼は程なくしてパリそして宮殿に戻ることになった、その状況になってだ。ナポレオンを愛する者達は口々に言い合った。
「あの花で宮殿を飾るぞ」
「絶対にそうするぞ」
「菫だ」
「菫の花だ」
ナポレオンが愛しているその花でというのだ。
「宮殿を菫で飾るんだ」
「そしてあの方をお迎えするぞ」
「パリの街もそうするんだ」
「そしてあの方に喜んで頂こう」
「折角戻ってくれたのだからな」
こう言ってパリの街も宮殿も菫の花で飾った、ナポレオンはそのパリの中を民衆の歓呼の声の中進みそうしてだった。
宮殿に戻った、菫の花が至るところにあり歓呼の声と共に彼を出迎えていた。
だがそれでもだ、ナポレオンは。
その菫達を遠くを見る感じの悲しい目で見てだ、こんなことを言った。
「戻れた、だが共に戻りたかった者はいない」
「皇后様はですか」
「そうだというのですか」
「そうだ、この花はジョセフィーヌが好きでだ」
それでと言うのだった。
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