第一章
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女帝の厳しさ
マリア=テレジアが治めるオーストリア、正確には神聖ローマ帝国だが実際の治めている範囲はオーストリアを中心とした地域だったので欧州の殆どの者がこう思って呼んでいた。
そのオーストリアのウィーン、当のマリア=テレジアが座しているこの都に古くから住んでいる居酒屋の親父はある日こんなことを言った。
「昔はもっとな」
「もっとっていうと?」
「おおらかな感じだったかな」
若い客にこう言うのだった。
「男と女についてはな」
「そうだったのかい」
「もっと娼婦とかいてな」
ウィーンの街にもというのだ。
「それで舞踏会だってな」
「貴族の人達のそれもかい」
「仮面舞踏会とかやってな」
それでというのだ。
「もっとおおらかだったんだよ」
「そうだったんだな」
「昔はな、確かにオーストリアはよくなってな」
その実感があるので親父はそれはいいとした。髭はないがついでに髪の毛も前からなく頭が見事に光っている。目は茶色だ。
「ウィーンだって賑やかになってるよ」
「それはいいことだよな」
「ああ、けれどな」
「男と女のことはか」
「今みたいにいがかわしいとな」
娼婦だの何だのはというのだ。
「すぐに止めなさいとなる」
「そんな風じゃなかったか」
「あれだよな、やっぱりな」
「やっぱりって何だよ」
「マリア=テレジア様がな」
「ああ、あの方がか」
「治められる様になってな」
それからだというのだ。
「変わったな」
「やっぱりそうなるんだな」
「そうだな、あの方は素晴らしい方だよ」
親父もそのことは事実だと語った、そのうえで店の木製のカウンターに座ってビールを飲んでいる若い客、くすんだ金髪に青い目の彼に語った。
「プロイセンとも戦われていてな」
「シュレージェン泥棒とな」
当時オーストリアはシュレージェンに侵攻したプロイセンそしてその国王であるフリードリヒ大王と戦っていた。後世にオーストリア継承戦争、七年戦争と呼ばれる二つの戦争だ。
「そうしてるな」
「それで国をどんどんな」
「よくして下さってるな」
「凄い方だよ」
このことは認めるというのだ。
「皇帝陛下も大事にされてるしな」
「ロートリンゲンから来られたな」
「お子の方々も多くてな」
「ご子息も生まれてるしな」
跡継ぎだ、オーストリアを治めるハプスブルク家にとって何よりも大事な。後のヨーゼフ二世である。
「何かと頑張っておられるな」
「凄い方だよ、ただな」
「男と女のことはか」
「ちょっとな」
それこそというのだ。
「いかがわしいとな」
「駄目ってなるか」
「あの方が治められる様になってからな」
そうなったというのだ。
「そこがな」
「おやっさ
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