第四章
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「この事態はな」
「君の作品は正しい評価を受けているのか」
「私に文才はあったか」
「あったかというよりかだ」
「私の予想以上にだな」
「それがあったのだろう、それが為にだ」
友人はメルヴィルにさらに話していった。
「君の名は今や世界的にだ」
「文学の歴史に名を残してか」
「不滅のものになっているのだ」
「そうなのか」
「人の、世の中の評価はわからないものだ」
「生きている時は評価されず」
メルヴィルは達観した目になっていた、この世を去っていたのでこのことは余計にそうなっていた。
「死んで三十年も経ってだ」
「そうなるとはか」
「世の中はわからない、人もな」
「そうだな、当時のアメリカに合わなかっただけかも知れないが」
しかしと言うのだった。
「君が今は世界的な評価を受けている」
「そのことは事実だな」
「そうだ、当時のアメリカもそう考えると狭い国だったかも知れないし」
それにとだ、友人はメルヴィルにさらに話した。
「真価というものはすぐにわかるものでもない」
「そうでもあるか」
「とにかくだ」
「私の評価は今はだな」
「世界的なものになっている、そしてだ」
あらためてだ、友人はメルヴィルに話した。
「今の君はな」
「生活を気にすることなくだな」
「書くことが出来る」
そうなったというのだ。
「こちらの世界では食べることも稼ぐことも必要がない」
「それ故にだな」
「好きな作品を好きなだけ書ける」
「ならだな」
「どんどん書くことだ、そうすればだ」
「この世界でもだな」
「君の作品は読まれるだろう」
「そうか、ならな」
メルヴィルはノートパソコンに手をやった、時代の進歩は天界にも及んでいて彼は今はペンではなくパソコンのワードパッドで執筆を行っているのだ。
「これからも書こう」
「まずはだな」
「書かないと何もならない」
「読まれることも評価されることもな」
「なら書く、私の作品をな」
「そうするのだな、では私もだ」
友人はメルヴィルのその言葉を聞いて微笑んだ、そのうえで言うのだった。
「君の作品を読ませてもらう」
「そうしてくれるか」
「今もな」
死んでからもとだ、こう彼に言ってだった。
彼は天界でもメルヴィルの作品を読んだ、メルヴィルの作品は天界でも評価が高かった。生前の彼の作品とは違って。
死んだ後の評価 完
2019・3・15
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