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阪神男
第一章
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               阪神男
 岡田彰布は大阪に生まれた、それで子供の頃からこんなことを言っていた。
「大人になったら阪神に入るわ」
「おお、そう言うか」
「そや、絶対にや」
 大人達に笑って言っていた、彼の家は玉造の町工場の息子だったが彼の父は阪神タイガースの熱狂的なファンだった。
 それで村山実や藤本勝巳とも信仰があり岡田もだった。
 阪神と縁が深くだ、素晴しい守備で有名だった三宅秀史とキャッチボールをして学校で友人達に言うのだった。
「俺この前三宅さんとキャッチボールしてん」
「おい、それ凄いな」
「あのめっちゃ守備上手な人とか」
「自分羨ましいな」
「凄いことやな」
「それで阪神に入ったらな」
 その時はというのだ。
「俺十六番着けるわ」
「三宅さんの背番号か」
「あの人の背番号着けるか」
「それで阪神で頑張るか」
「サードになるか」
「あの人みたいなサードになるわ」
 こう言うのだった、そして優勝の時は車に乗せてもらったりもした。それが彼の阪神への愛情をより一層育てた。
 それで少年野球でもだった、彼は彼にとっても後に阪神にとってもそう言えることであるが野球の才能に恵まれていた。
 その為少年野球でピッチャーだったが。
「俺は一番やと嫌ですわ」
「ほなどの番号がええねん」
 監督はピッチャーの背番号一を嫌がる岡田に問い返した。
「それやったら」
「十一や」 
 この背番号だというのだ。
「俺はそれしかあかん」
「十一いうたら」
 監督も岡田がどれだけ阪神が好きか知っている、それですぐにわかった。
「村山か」
「あの人の背番号がええ」
 阪神もっと言えば日本の野球史に永遠に名を遺すエースのというのだ。
「それしか着けたくない」
「そうか、わかった」
 監督は岡田の気持ちを汲み取って頷いた。
 そのうえでだ、彼に強い声で言った。
「ほなお前の背番号は十一や」
「それでええんやな」
「村山みたいに投げてや」
「そしてやな」
「ええピッチャーになれ」
 こう岡田に言った、そして岡田は実際にその背番号十一を背負って少年野球で活躍した。その彼が甲子園に足しげく通っているのは言うまでもなかった。
 だが彼が座る場所は独特だった。
「お前またそこか」
「また三塁側か」
「そっちに座るんかいな」
「そや」
 岡田は一緒に球場に来た友人達に笑顔で答えた。
「今日もそこに行くわ」
「何でそっちやねん」
「阪神ファンやと一塁側やろ」
「お前阪神ファンやろ」
「それか通はネット裏やろ」
「そこでバッターボックス見るっていうで」
 そしてそこから球場全体をだ、これが通の観戦だとされている。
「それもかいな」
「三塁側かいな」
「しかも今日は相手巨人
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