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最低の人間
第一章

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               最低の人間
 松居ゆかりはこの時夫の英二と揉めていた、揉めている原因は最初は些細な喧嘩だったがそこからどんどん色々なことで揉めてだ。
 最早夫のあらゆることが嫌になっていた、それで友人や自分の親戚に会うとだ。
 口を歪めさせ目を怒らせてだ、こう言う様になっていた。
「せこくてね」
「おトイレ行っても手を洗うのいい加減だし」
「信じられる?お味噌汁大きな音立てて飲むのよ」
「今時縞々のトランクス穿いてるのよ」
「髪の毛薄くなってるのに誤魔化すし」
「加齢臭が酷くて」
 こんなことばかり言っていた、だが。
 友人達も親戚達もだ、そんな彼女の話を最初は黙って聞いていたが。
 ゆかりがいつも言うのでだ、いい加減こう思いはじめだした。
「いい加減しつこいわね」
「そうよね」
「もう離婚すると思うけれど」
「すっぱり別れたらいいのに」
「ご主人もそのつもりだっていうし」
「だったらもう後はね」
 それこそというのだ。
「あっさり別れたらいいじゃない」
「慰謝料でも貰ってね」
「自分もお仕事持ってるし」
「好きに暮らせばいいのに」
「そんなに嫌いなら」
 夫の英二がというのだ、既に別居状態になっている。夫の方が嫌気がさして家を出てしまったのだ。
 それならとだ、友人達も親戚達も言うのだった。
「もうね」
「それで別れて」
「もう後はね」
「忘れたらいいのに」
「嫌いな相手のこといつも頭の中にあるみたいだけれど」
「それって楽しいのかしら」
「いつもいつも悪口ばかり言って」
「ツイッターでもブログでも」
 ゆかりのそれもだった、友人や親戚達に彼女がまだ夫と仲がよかった頃に笑顔で紹介したそれもだった。
「昔はほのぼのしてたのに」
「普通に日常ばかり書いてたのに」
「可愛い猫の写真とか載せてね」
 その猫は夫が貰ってきたもので今は夫と一緒に暮らしている。
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