第一章
[2]次話
約束
この時期は私も忙しいけれど彼も忙しい、それで今日もだ。
昼休みに連絡があった、彼はスマホから出るとこんなことを言ってきた。
「御免、今日残業で」
「それでなのね」
「今夜の約束はね」
一緒にバーに行っての夜のデートのそれはというのだ。
「悪いけれど」
「そうなのね」
「うん、悪いけれど」
「仕方ないわね」
私は自分も忙しいことから彼に答えた。
「それは」
「うん、じゃあね」
「また今度ね」
「それでいいかな」
「ええ、いいわ」
正直こう答えるしかなかった、急な仕事が入ることは彼の常だ。そしてそれは私もだから。
「それでね」
「そういうことでね」
「じゃあまたね」
「埋め合わせはするから」
「気にしなくていいわ」
私はくすりと笑って彼に告げた、そうしてスマートフォンを切った。彼には何でもないという風なことを言ったけれどだ。
それでもだ、私は実は。
心の中で残念に思った、そう思うことはどうしようもなくてだった。それで表には出さず心で溜息を少しだけついてだった。
それからスマホをなおして後は自分の時間に戻った、今回の約束は彼が駄目だったと。そして次の約束は私の方からだった、ようやく仕事が終わるという五時の直前に急にだった。課長から言われた仕事が入って。
彼にメールを送ると仕方ないよという労わる返事が返って来た、けれど。
私は仕事が終わった八時にだ、仕事仲間に言った。
「今日もよ」
「彼氏とのことはなのね」
「そう、今夜もね」
今夜は映画館に行こうと思っていたけれどだ。
「駄目だったわ」
「今ここ忙しいからね」
「それで向こうもね」
「忙しくて」
「それでね」
そのせいでだ。
「私達はね」
「今はお互いになのね」
「片方が忙しくて」
急な仕事が入る、約束をしても。
「それでね」
「どうしようもないわね」
「ええ、今の状況が終わるまでは」
お互いに忙しい状況がだ。
「どうしようもないわ」
「そうね、じゃあね」
「今はなのね」
「我慢して」
正直選択肢は一つしかなかった。
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