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戦国異伝供書
第五十三話 三度南へその十一

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「よいな」
「それでは」
「その為の大きな盟約じゃ」
「それをですか」
「当家は結べる様になった」
「よいことですな」
 今川家が西に進むということは尾張つまり信長と戦うことだ、元康はこのことには思うことがあったがその心は隠して雪斎に応えた。
「そのことは」
「これがじゃ」
「政ですな」
「よく見ておくのじゃ、わしはそなたが弟子でじゃ」
 自分と共に酒を飲む彼にさらに言うのだった。
「まことによかったわ」
「そこまで言って頂けますか」
「そうじゃ、自慢の弟子じゃ」
 こうまで言うのだった。
「まことにな、だからな」
「これからもですな」
「学問にも鍛錬にもな」
「励んで」
「より自分を磨くのじゃ」
「そうさせて頂きます」
「その様にな。ただお主はどうもな」
 ここで少し苦笑いになってだ、雪斎は元康にこうも言った。
「おなごが好きであるな」
「そのことは」
「隠さずともよい、わしもこうしてじゃ」 
 鮭を飲みつつの言葉だった。
「酒は止められぬからな」
「それは般若湯では」
「それはわかっておろう」
「そう言われますか」
「そのわしが言うのも何であるがな」
「それがしはですか」
「かなりのおなご好きであるがな」
 それはというのだ。
「多少な」
「慎むべきですか」
「溺れるまでは入るでないぞ」
 女にというのだ。
「よいな」
「若し溺れますと」
「あれはあれで身体を壊し病にもな」
「そういえば」
「聞いておろう、花柳からな」
「病が出ておりますな」
「瘡病がな」
 この病のことを言うのだ。
「あれになれば終わりじゃ」
「これ以上はないまでに惨い死に方ですな」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「よいな」
「おなごは」
「溺れるまでは入り込まずな」
「花柳にもですな」
「気をつけることじゃ」
「この身の為にも」
「そういうことじゃ、よいな」
「わかり申した」
 元康も素直に頷いた、そしてだった。
 彼の飲みつつだ、今度は彼から雪斎に話した。
「それで武田殿と長尾殿どちらがより」
「強いか、か」
「和上はどう思われますか」
「戦自体は長尾殿であるが」
 それでもとだ、雪斎は元康に答えた。
「それでも武田殿には知恵がある」
「だからですか」
「戦の武では長尾殿に劣ってもな」
「その知恵で」
「戦われるからな」
「結果として五分ですか」
「そうであろう」
 これが雪斎の見立てだった。
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