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ある晴れた日に
680部分:日の光は薄らぎその十

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日の光は薄らぎその十

「だから本人の前では言えない話ね」
「古木も好きだし」
「田中一徳も贔屓だし」
「人を見る目はあのチームのフロントよりあるんだな」
 それは何となくだがわかることだった。
「それは」
「そりゃね、あのフロントは」
「幾ら何でも」
「最低だから」
 これは誰もが言った。
「一昔の阪神のフロントと同じでね」
「全くねえ、あれはないわよ」
「だよな、本当にな」
「野球とか全然知らないだろ」
「経営も駄目なんじゃねえのか?」
「確かに」
 学生達にすら徹底的にこきおろされる横浜のフロントであった。しかしそれも実績を考えれば仕方のないことであった。それが全てであった。
「少年もねえ。それわかっていてね」
「ある意味凄いわよ」
 静華と凛が言う。
「ベイスターズ一筋なんだから」
「私達も人のこと言えないけれどね」
 そしてこんなことも言った。
「阪神も大概だし」
「阪神のフロントも凄かったしね」
 阪神のシーズンオフはそのままお家騒動のシーズンであった。阪神の歴史といえばそのままお家騒動の歴史であり続けていたのである。なおこれはシーズン中でも頻発した。
「まあ阪神はね」
「それもまた華」
「何があってもそれが絵になる」
「まさにそれこそが阪神」
 こう言って強引に理由付けた二人だった。そしてそれだけではなかった。
 そして皆もだ。ここで言うのであった。
「まあ阪神だからな」
「人のこと言えないところあるからな」
「どうしてもな」
 それも事実であった。とにかく阪神の凄いところであった。
「猛虎もねえ」
「何ていうか」
「弱い時代あったし」
 阪神暗黒時代のことである。
「七年のうちに六回の最下位」
「負けて負けて負けまくって」
「全然得点が入らない」
 そういう弱さだったのである。
「ピッチャーはそこそこ抑えてもね」
「それでも打たなかったよな」
「全然」
 皆その時代のことを思い出してしんみりとなる。しかしそうでもない面々もいた。
 恵美はだ。それを聞いても目をしばたかせるだけであった。
「何か実感ないわね」
「へっ、ライオンはいいよな」
「無茶苦茶強かったからな」
「今でもね」
 冷めた目で恵美を見ながらの言葉である。
「あれだけ主力次から次に出るのに」
「全然弱くならないし」
「どうなのよ」
「随分と弱くなったわよ」
 しかし恵美はこう言うのであった。
「秋山も辻も平野も石毛も吉竹も杉本もいなくなったし」
「清原は?」
「あいつはどうでもいいから」
 清原に対しては随分と冷たかった。茜の問いにも素っ気無い。

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