三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第37話 愚かな実験
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それを大人数で合わせることで、広範囲かつ強いエネルギーを生み出す。
どうやらそういうことらしい。
「足りん! 雲を吹き飛ばすくらい必要だ! そのままもっと強めろ!」
怒声のような指示。
しかし。
――ああ、やっぱり。
一人、二人と、反作用に耐え切れなくなった魔法使いが、仰向けに地面に倒れていく。これはシドウとしては想定の範囲内だ。
「踏ん張れ!」
その声もむなしく、次々と魔法使いは倒れていった。
百人合作の風魔法もあっという間に崩壊。
ふたたびシドウたちの頬にも雨が打ち付けるようになった。
――ダメだ。全然通用していない。
空気の発射により、風は起こせているのだろう。理論上は雲の流れまで届くような規模にもなるのかもしれない。だが、熱帯低気圧の持つ力と比べると、おそらく足元にも及んでいない。
そして強い風を起こせば起こすほど、術者側への反作用も強くなる。この軍団はそれも甘く見ていた節がある。
(ねえシドウ、なんでみんな倒れたの?)
せっかく距離を取っていたはずのティアが、モゾモゾと近づいてきてそんなことを聞いてくる。
(壁を蹴ると後ろに押し返される感じがするのと同じだよ)
(空に壁なんてないじゃない)
ティアは風魔法を使えないため、ピンときていないようである。
(空気があるよ。この場合は猛烈な速度で押し寄せている空気が、壁の役割になるんだ)
今回の実験、どうやら新開発の風魔法とやらにその対策はない。単なる合わせ技で威力を増しただけのように見えた。
この路線ではダメだとシドウは思った。これでは人体のほうが耐えられない。魔法が強くなればなるほど術者が危険になるだけで、永遠に実験は成功しないだろう。
「今回の実験は中止だ! 全員灯台に避難!」
リーダーから指示が出た。
シドウたちにとっての問題は、このあとだ。実験の失敗が明らかになった以上、死人やケガ人が発生しないようにこの場を畳んでもらわなければならない。
避難先はこの場で唯一の建物である灯台。高さはさほどでもないが、百人は十分に収容できるほどの重厚な造りになっている。
新魔王軍を名乗るグループの目的は、魔法使いの死体の確保。何者かが潜んでいるとすれば、ここである可能性が高い。シドウはそう踏んでいた。
シドウとティアを縛っていた紐は、足だけ外された。
乱暴に手の紐を引っ張られ、魔法使い軍団の最後尾をついていく。
「あの、手の紐も外してもらえませんか。どこにも逃げませんので」
塔の中に、何者かが潜んでいる可能性がある。こちらの魔法使い軍団は百人いるが、もともとこれだけの人数が集まるのは新魔王軍側の思惑どおりであるはず。首尾よく死体にする
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