675部分:日の光は薄らぎその五
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日の光は薄らぎその五
「こうして差し入れしてるけれどな」
「ああ」
「それがどうしたんだ?」
男組が彼のその言葉に問い返した。
「竹林のお母さん達に頂いてもらってるよな」
「こいつが食べられたらな」
「そうだよな」
それは彼等もわかっている。それはである。
「それもいいんじゃねえか?」
「だよな。無駄にはなってねえし」
「そうか。そうだよな」
それを聞いて納得した顔に戻った野本だった。
「やっぱりお母さん達が一番辛いだろうからな」
「自分の娘だからな」
「やっぱりそうだろう」
そのことも話されるのだった。
「それだからな」
「今はな」
「そうだ」
そして正道もその通りだというのだった。
「俺も差し入れを持って来ることがある」
「あれっ、そうだったの」
それを聞いた茜が意外そうな声を出した。
「あんたもだったの」
「そうだが」
「それは気付かなかったわ」
それはなのだった。
「そうだったの」
「色々持って来た」
そうだったというのである。
「しかし今はだ」
「気持ちをね。持って来てよね」
「気持ちでしかない」
「気持ちが一番大事なのよ」
気持ちを低いものに位置させようとした正道だったがここで明日夢が彼に対して言ってきた。その気持ちというものに対しての言葉である。
「それがね」
「そういうものか」
「心がないとそこにあるものは何でもないものなのよ」
そしてこう言うのだった。
「だからよ」
「だからか」
「あんたは気持ちじゃ誰にも負けてないわよ」
そして正道のその心についても話す。
「だからね。それはね」
「いいのか」
「いいのよ。それでだけれど」
「それで?」
「未晴は食べてるのよ」
今度はこんなことを言ってきたのであった。
「ちゃんとね」
「食べているのか」
「皆の贈り物。ちゃんとね」
「そうだね。心でね」
加山が話に加わってきたのだった。
「竹林さん、差し入れ食べてるよね」
「それに見えてもいるわ」
明日夢はこんなことも話してきた。
「ちゃんとね」
「心もか」
「そうよ。心もね」
それもだと正道に話す。
「ちゃんとね」
「花だけじゃないんだな」
「花にも心があるじゃない」
未晴は今は俯いていはいない。顔は正面にある。そしてその前にある花を見ているのだ。その桃色や白に咲き誇るコスモス達を見ているのだ。
「ちゃんとね、花自体の心も」
「花自体にもか」
「そうよ。咲いて生きようっていう心がね」
そうした心だというのである。
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