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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode8『真実』
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突然出てきた彼の名に困惑するヒナミに、智代は無理もないと言いたげに笑うと、一つ深く息を吐く。

「あの子がOI体質者だという話は、したな」

「……うん、内容までは知らないけど……かなり重度のOW(オーバーワールド)だって話は、聞いた」

 重度のオーバーワールドを持つという事はつまり、それほど当人の認識する世界を深刻に歪めてしまう強烈なイメージを持っているという事だ。だが、数多くとは言わないが、そんなOI能力者は日本だけでもある程度存在する。その中でシンだけを国が特別扱いする理由がわからない。

 無理を押してまでヒナミをここに連れてくるに足る要因、それがシンだというのなら――

「シンの位階は、《振鉄(ウォーモング)》だ。或いはもしもそのさらに上の位階があるのなら、その域に達している可能性すら存在する」

「振鉄のさらに上、って……!?」

 無論、そんなものは存在しない。あくまで“もしも存在するなら”という話の上でだ。
 そしてそんなものが存在しない現状からも分かるだろう、存在していないのは『存在しなかったから』という理由以外にない。居ないゆえに必要がなかったから、ないのだ。

 つまりそれは、シンのオーバード・イメージが。


 ――人類史最高位階に位置する、という宣言に他ならない。


「……シンのあの傷は、あの子のOW(オーバーワールド)によるものだ」

「OW、っていっても、確か五感とか認識のところが歪んでるだけで、実際に体そのものに影響を与えるものじゃないんでしょ?なら何で……」

「分からない。あの子は《自分が鬼に見える》と言っていたが……おそらくそれだけではないんだ、あの子の世界は。あの子の世界(イメージ)は、あの子自身を傷つけ続けている……アストラル体だけに留まらず、こうして物質界にも傷として表れてしまう程に」

 ――絶句する。
 何も、シンの症状についてではない。無論それも閉口するに値する話ではあったが、それに付随して判明した智代の意図に、ヒナミは何も声を発せなかった。
 智代も、ヒナミが全てを察したことに気が付いたのだろう。苦虫を噛み潰したような、或いは短刀を己が腹に突き立てたような顔で、口を開く。

「ああ、そうだ……許せ、ヒナミ」


 前例の無い程の強大なOI体質者に、ヒナミという規格外の魔女を引き合わせる理由など一つしかない。


 智代は――




「――私は、シンを救うために、お前を利用しようと(危険に晒)している」





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