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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode8『真実』
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「……すまない、ヒナミ」という謝罪の言葉が発される。

 それが、シスターの部屋に入って直ぐの出来事。ついさっきまでの冷静な彼女の様子からの突然の変化に驚きこそしたが、別にそのことを責める理由もない。無論、理由は気になるのだが

「……どうしたの?」

「……なんでもない、と言わなければならないのだろうがな。少々、私の中でも耐え難くなってきたらしい。すまないが聞いてくれ――シンにも、おまえにも関係する話だ、ヒナミ」

「わたし、にも?」

 困惑するヒナミをベッドに座らせた智代は、自分もまたその前に椅子を置いて腰掛ける。近くにあった作業机の中から厚みのあるクリアファイルを取り出した彼女はその中をぺらぺらとめくると、やがて目当てのものが見つかったのか、一纏まりになった紙束を取り出す。一番表のものはどうやら住民票のコピーらしく、その内には“宮真妃波”の文字列。更にその裏から取り出されたのは、一枚の見慣れない資料だった。

「……委任、状?」

「そう。おまえの身柄を預かるときに私に託された、正式にお前の身元引受人としてこの私――有馬智代を選定する旨が記された、国からの指示書だ」

「国からの……って、でも、それなら」

「あぁ、本来なら、お前はもっと念入りに保護される筈だった。それこそ聖憐……或いは、東の聖玉や聖銑で厳重に囲い込まれる手筈だったんだ、本当は」

 だが、現実としてそうはなっていない。ヒナミはこうして、どこにでもあるような小さな児童養護施設に預けられ、たった一組の製鉄師のみが護衛としてついている。
 無論、国とてヒナミの魔女としての破格の才は認識している。未だ前例の無いほどに規格外の魔女適正値は、日本皇国にとっても真っ先に保護せねばならない対象として登録されていた。
 ならばなぜ、ヒナミは今ここにいるのか。なぜこんなにも無防備な場所で、リスクを抱えながら暮らしているのか。

 決まっている。

「――()()()()()()()()()()()

「……え?」

 あまりにもハッキリと告げられたその一言を、聞き違える筈もない。
 智代は今、ヒナミがリスクを背負ってまでここに来たのは、己が仕組んだ結果だと言った。ヒナミを敢えて危険に晒し、小さな児童養護施設に連れてきたのは、他でもない智代自身だと言ったのだ。

 ヒナミがここに連れて来られた時、府の役人は“身元引受先が見つかった”と言っていた。無論それに偽りはないが、まるでそこ以外に選択肢がないかのような口ぶりで。

「無論、他が黙ってはいなかったがな……全て黙らせたよ。こちらには大義名分があったからな」

「大義名分、って……」

「――シンだ」

 
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