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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode8『真実』
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 なぜシンは、それに気付かない?

「シン」

 突然聞こえてきた声に、はっとして顔を上げる。
 長い焦げ茶色の髪を一括りにまとめて、深い藍色のベールを被った長身の立ち姿には、よく見覚えがあった。彼女はシンとよく似た困ったような表情でため息を吐くと、駆け足でシンの傍に近寄る。

「っと、ごめんシスター。また怪我しちゃってたみたい」

「今回もまた派手な傷だな、痛みはないんだろう?……っと、あぁ。ないと思ったら、救急箱はミナが持ってきてくれていたんだな。ありがとう」

「え、あ……うん」

 慣れたような手つきでてきぱきと手当てを進めていくシスター――智代の後ろで、半ば呆然としながら立ち尽くす。だがヒナミがどういった反応をしようが周囲の皆にとっては慣れたことのようで、特に慌てた様子もないまま淡々と処置を進めていく。

 くるくると巻かれた包帯はすぐに赤く滲んで、更に痛ましさを加速させる。そんな姿になっても何でもないように笑っているシンの姿が、より一層その異様さを際立たせていた。

 ――不意に、トンと肩に手が置かれる。

「……?」

「少し良いか、ミナ」

 そう言って微笑んできた智代は、シンの手当てを終わらせるとすっと立ち上がって、シンに「今日は部屋で安静にしておけ、皆を心配させる訳にもいかんだろう」と少し強めの口調で念を押す。シンの事だから無理を押して動きかねないというのは彼女もよく承知しているのだろう。
 皆が心配するなんて聞いてしまえばさすがにシンも従うしかないのか、若干不満そうながらも「わかった」と立ち上がる。少し智代と離れた位置でこちらの様子をうかがっていたマナが、慌てたようにシンの傍に駆け寄った。

「……丁度よかった。マナ、シンを部屋まで送ってやってくれないか?」

「……っ、う、うん。わかった、シスター」

 びくんと怯えたように背筋を伸ばしてそう答えたマナは、シンの横に付いてそそくさと立ち去っていく。若干『まだ怖がられているな……』とでも言いたげな少し凹んだ表情を浮かべた智代は、ヒナミの方に向き直ると、ぽつりと一言呟く。

「場所を変えよう。あまり、皆には聞かれたくない話でな」

「……。」

 呆然と状況を見ているのみだったヒナミは、ようやくそこでこくりと、頷きで肯定の意を示した。








 ――――――――――――







「く、そ……っ!」

 ドッ、という鈍い音と共に、真っ白な拳が木製の柱に叩き付けられる。あまりに力のこもった殴打に拳の方が傷ついて、つぅっと赤い血が指の隙間を伝って落ちた。
 急にそんならしくもない行動を起こした智代にすこし驚いたヒナミの様子に気が付いたのか、額を柱に預けながらも小さな声で
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