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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode8『真実』
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手には少し大きめの木箱が収まっており、蓋には赤十字のマーク。どうやら、わざわざ救急箱を取りに行ってくれていたらしい。

「放っておけば勝手に治るのに」

「だめ、傷口からばい菌入っちゃったら危ないんだから。それに、服が血で汚れちゃってるでしょ?ほら座って、それとシャツ脱いで」

「うぐ、服の事を言われると……」

 渋るシンの手を引っ張って座らせたヒナミは脇に置いた救急箱から消毒液を取り出して、ティッシュを何枚か取り出す。渋々シャツを脱いで背中を晒したシンの背中に手当てを施そうとしたところで、ヒナミが驚いたように目を見開いた。

「……ね、ねぇ、結構大きめの傷だけど、ほんとに痛くないの?」


 ――シンの背に出来た傷は、ちょっと怪我をしてしまったと言うには、少し大きすぎた。


 てっきり、どこかで切ってしまったとか、あるいは転んでしまったとか、そのくらいの傷だと思っていた。だがこうして診てみれば、明らかにそんな軽い怪我ではない。
 勿論、重症と表現するにはいささかオーバーではある。が、肩甲骨から背筋を伝うようにある傷は、明らかに並の怪我ではなかった。

 明らかに、普通の手当てでは足りない。

「なんで、こんな……」

「……あれ、シン兄また怪我してた?」

 ふと、横からそんな声が掛けられる。想定以上の怪我にどうすればいいのかと途方に暮れていたヒナミがばっと振り向けば、そこに居たのは見知った顔――マナが、心配そうにこちらを覗き込んでいた。

「ま、マナ……これ、どうすれば……」

「やっぱり。最近多いね……ちょっと待ってて、すぐシスター呼んでくる」

「……最近、多い……?」

 ヒナミが疑問気に問い返すよりも早く、慌ててマナは階段を駆け下りていく。その場に残されて途方に暮れるヒナミの様子を見かねたのか、シンが笑って話を振ってきた。

「実は最近、結構こういうことが多くってさ。僕も気づかないうちに、体のどこかが怪我しちゃうみたいなんだ。痛くはないからいいんだけど、服が汚れちゃうから勘弁してほしいよね」

「痛くはないって……この怪我で……?しかも、最近多いって……」

 慌ててシンの体を改めて見てみれば、全身の至る所に真新しい傷跡のようなものが散見された。瘡蓋は勿論、酷いところだと縫った跡の様なものまである。しかも新しいものだけではない、よくよく見れば、無数の古傷が新しい傷の下に敷き詰められている。

 それはまるで、拷問でも受け続けてきたかのような有様だった。

 これが“最近多い”?馬鹿な、こんな傷がちょっとやそっとのドジでそう頻繁に起こるものか。明らかに何かしらの外的要因が、彼にこの傷を負わせているとしか思えない。
 ……が、仮にそうだとして、そもそも。


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