暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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て見えるんじゃないかしら。
 「ふわふわって…… ああ! お嬢さんはシャボン玉を知らないんだね」
 「しゃぼんだま?」
 「この泡の事さ」
 おばさまが腕に付いた泡を息で払い、大きさが異なる無数の透明な球体を空中に舞い踊らせた。
 「北方領だとね、脂汚れの類は直ぐに固まってしまって、物凄く落とし難いんだ。だからと言って長時間お湯に触ってるとあっという間に水温が下がって、最悪凍傷になってしまう。そうならない為に作られたのが、これ」
 首に掛けていたタオルで両腕を丁寧に拭き取り、木桶の横に置いてあった紙袋を手渡してくれた。上部に折り目が付いたその紙袋には、私にも辛うじて読める文字が書かれている。
 「せん、……ざ、い?」
 「やっぱり読めるんだ? 王都の子は賢いね。そう、洗剤。その袋に入ってる粉をお湯に溶かして使うとさっきみたいに泡が出来て、その泡に息を吹き込んで大きくするとシャボン玉になるんだ。洗剤を溶かしたお湯は照明器具の洗浄にも食器や衣類の洗濯にも使えるから、手伝った後の子供達の遊び道具にもなってるよ」
 「実用的なんですね」
 「ああ。特に寒い日は、外でシャボン玉を作って凍らせたりもするね」
 「!? 凍るんですか!? 泡が!?」
 「基本的にはただの水だから」
 「信じられない……!」
 ただの水が空気を包んで宙に浮かび上がり、その上そんな状態で凍るっていうの!? 神や悪魔が干渉している気配も無いのに!?
 「いったい、どんな力が込められているの……洗剤……っ!」
 息を呑む私に、けれどおばさまは呆気に取られた表情をして、噴き出した。
 「洗剤にそんな反応するなんて、お嬢さんは面白い子だねぇ。なんならまだ開けてないヤツを売ってあげようか? ついでにシャボン玉の作り方も教えてあげるよ」
 「え!? でも、大切な物なんじゃ」
 「だから、譲るんじゃなくて売るんだよ。私が買った時の値段で買い取ってくれるなら、私に損は無いからね。そのお金で新しく買えば良いんだし」
 「それは……」
 それなら確かに金銭的な損は無いかも知れない。
 でも、洗剤ってそう簡単に手に入る物なの? 教会では全然使ってないし、袋も見掛けなかったけど。
 「市場はもうすぐ閉まっちゃうよ。どうする?」
 「あ」
 言われて周囲を見渡せば、お客さんも店員さんも大分姿を消していた。おばさまも片付けの途中だし、これ以上邪魔をしては迷惑になってしまう。
 「では、洗剤の価格を教えてください。取り置きしていただいていたペンダントの分も一緒に。持ち合わせと相談してみます」
 「はいはい。ちょっと待ってて頂戴ね」
 年齢を感じさせない足取りで現物を持って来てくれたおばさまが示した値段は、購入を考えていたもう一品を加えても、アーレストさんから預かったお
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