暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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大木の枝葉に積もっていた雪が一斉に降り注ぎ、真下に立っていた子供集団は清々しい程雪塗れになった。
 「つっ……めてぇええええ!?」
 「やだぁ! 服がびしょ濡れになっちゃうよお!」
 「お前、それ、はんそくっ……!」
 「あらあら、ごめんなさいね? 私、降雪時季が短い王都から来た余所者だもの。雪遊びなんて全然知らないのよ。だから、先に教えてくれれば良かったのに」
 地面に座り込んでしまった十九人の前で屈み、両膝で支えた両手に顎を乗せてにーっこりと笑ってあげる。
 全員が目を逸らして言葉を詰まらせた時点で、私の勝利は確定ね。
 まったく。履き慣れない靴で走らせないで欲しいわ。転んだらどうしようかとヒヤヒヤしたじゃない。
 「ねぇ。折角巻き込んでくれたんだし、ちょっと付き合ってくれない? そっちに隠れてる二人も」
 「「え!?」」
 まさか、自分達に気付いているとは思ってなかったのかしら。
 こそこそっと覗いてた女の子達が、目を真ん丸にして姿を見せた。
 「私ね。王都に住む友達に、この土地ならではのお土産を持って行ってあげたいの。あなた達がいつも食べてる物とか、他の居住地から来た人間に自慢したい物とか、そういうのがあったら教えてくれない?」
 「なん……なんでオレ達が、そんな事!」
 「自分で探せば良いだろ!?」
 「そーだそーだ!」
 「勿論、自分でも探してるわよ? でも、一人じゃ知るにも選ぶにも限界があるし、地元民の意見って貴重なのよねぇ……。ところで」
 反抗心で沸き立つ少年少女に向けて人差し指を伸ばした右手を突き付け、真っ直ぐ上に持ち上げる。
 指し示したのは、まだ白い塊が点々と残っている大木の枝葉。
 「もう一回、いっとく?」
 小首を傾げた問いに、返って来たのは沈黙だった。

 ご協力、ありがとうございます。
 


 「おや。戻って来たんだね」
 「はい……あの、それは?」
 お店の横で私を見付けた民芸品売りのおばさまが、数時間経っても変わらない笑顔で迎えてくれた。
 なんだかんだ言って仲良くなってしまった子供集団と一緒に街の中を歩いて回り、気付けば時刻は夕暮れ手前。
 結局決め手は無いまま渋る全員を半ば無理矢理帰らせて、散々迷った末に印象が強かったペンダントともう一品を買い求めに来たのだけど……店仕舞いの準備に入っていたおばさまの手元に、何やら見慣れない物がある。
 「? これかい? ただの洗い物だよ」
 「いえ、中身ではなくて、その上のふわふわした物です」
 木桶に溜められたお湯からおばさまの手が引き抜かれると、それは後を追い掛けるようにふわりと宙へ舞い上がり、やがて石畳に落ちて弾け飛んだ。
 キラキラと散っていく様子は、まるで粉々になったガラス細工。陽光の下で見たらもっと輝い
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