暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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われてみれば、泉の水でずぶ濡れになったべゼドラさんはしっかり視認できていましたね……。つまりそれが、力や気配を『消す』のではなく『隠している』状態、というわけですか」
『その通りだ。そして私の場合は、私を構成する物質が放つ音のすべてに、相殺する為の『音』をぶつけている』
「自らが出す音をことごとく消している、と? ですが、音を消しただけで姿まで消せるものなのですか?」
『単純な音ではなく、振動と捉えたほうが、理解しやすいかも知れないな。振動とは物質が動いた軌跡であり、他の物質の動き・現象、光の方向性をも左右する物。視覚は網膜が光を受容して生まれる感覚。私を構成する物質が放つ音のすべてを消すとは、要するに、生体反応に加えて、私の輪郭を浮き上がらせている光と影の動きをなかったことにしている状態だ』
「光と影の動きをなかったことにしている……そんな状態なら、少なくとも視覚ではよほどでないと捕捉できませんわね。あるいは嗅覚もかしら?」
『当然。嗅覚は光より大きな物質の振動だぞ。周囲への感覚情報を無にしているだけだし、水中の鈴と同様、私がここに居る事実は変えられないが』
「ああ。アオイデー本体は見えなくなったが、そこに居るって確信を持ってしっかり観察していれば、痕跡は目に映る。ロザリアの髪が一部だけ歪んで見えたのがそれだな。だがそれも、目を皿にするほど丁寧に観察してなきゃ違和感にもならない。お前の友人の力ってヤツは、明らかにおかしい事象をおかしいと思わせない作用があるんだな」
「気配を生体反応とするなら、気配を察するとは即ちそこに何らかの生物が居ると認識している状態。逆に、気配を感じなければそこには誰も居ないと判断している状態、と言えますわね。他者の目を厭う暗部の人間達でさえ、一度誰も居ないと判断した安全な場所では、警戒は続けるとしても、長時間探り続けようとはしないものです。日常生活の中にあるごく小さな変化に、暗部(かれら)以上の注意を払う常人など、居たとしても稀有な部類でしょう」
「注意を引くってのは、興味を引くのと同義。お前は、周りからの好奇心や関心をその力で削ぎ落しまくってきたわけだな。んで、周りの目が自分には決して向かない事実を利用して、フィレスの尻を追いかけ回していると」

 え? なにそれ。周辺の人間どころか、フィレスさん本人からも見えないところで、フィレスさんをずーっと観察してたって話?
 やだ怖い。

 私と同じことを考えたのか。
 ロザリア様もこそぉっと後退り、気絶しているリーシェさんを抱えて立つクロスツェルさんの左腕を、右手でそっと握った。

『……お前、いい加減にしておかないと、そろそろ本気でぶっ飛ばすぞ?』
「おお、怖い怖い。しかし、良いのかな〜? 『私』はフィレスの上司だ。『私』を害した場合、フィレスはお前
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