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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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「アリアシエル? 主神殿って……」

 鳥そのものの仕草で顔を覗き込まれたロザリア様が、うろたえながらも、なにやら考え込み。
 やや間を置いて、心当たりを弾き出した。

「……もしかして、この女悪魔の話か? 凄まじく強い力を持ってたけど、特に何かやらかしてたわけでもないから放置しようとしてたのに、自分から封印してくれって、アリアに話しかけてきた……」
『それだ。私はその場に居合わせていたんだ』
「けどあの周辺、女悪魔以外には誰も居なかったみたいだけど?」
『私は気配を消していたからな。ほれ、こうすれば見えないだろう?』

 言うが早いか、アオイデーさんの姿がパッと消えた。
 素早く飛び上がったのかと、慌てて周りを確認しても。
 確かに居た筈の小鳥は、室内のどこにも見当たらない。

「納得しましたわ、アオイデー様。常人が気付けないのも頷けます」

 極めて冷静にロザリア様の頭部だけをじっと見つめていたプリシラ様が、驚くロザリア様の動きを持ち上げた右手で制し、一歩手前まで歩み寄る。
 そしてロザリア様の額辺りに人差し指を差し出し。
 その側面に、消えた筈の小鳥をちょこんと乗せて離れた。

「え」
「ははぁーん? そういうことか」

 どうやら、アオイデーさんはまったく動いてなかったらしい。
 隠し芸か魔法かイタズラか、って場面で一切動揺しなかったプリシラ様とお父様の神経は、常人とはかけ離れた特殊な構造をしている、という認識で良いのでしょうか?

「初めて会った時もご友人の力で生物の気配を消していると伺いましたが。それは、力や気配を隠す『静謐(せいひつ)の泉』の水と同じ仕組みでしょうか?」
『いや、あれとは少し違う』

 フィレスさんの問いに、小鳥は小さな頭をくりくりと横に振る。

『そうだな。気配とは、生体反応そのもの。生物を構成する目には見えない小さな物質とその他の物質が衝突するたびに生じる、超極小単位の変化だ。この世界の生物は、その変化を視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚なんかで感じ取ってから識別している。ここまでは良いか?』
「はい」
『まず、精霊達が住まう泉の水は、対象の変化に対して混じり物が一切無い水気を大量に纏わせ、周囲への感覚情報を惑わせているに過ぎない』
「感覚情報を惑わせる?」
『たとえば金属製の鈴。地上で振れば普通に聴こえる音も、鈴だけを広深い水底に沈めてしまえば、地上からは聴こえにくくなるだろ? 底が深いほど手で直接触るのも難しくなるし、金属特有の匂いも感じようがない。だが、混じり気がない純粋な水はどこまでも透明で、水面に周囲の虚像を映し出し実像に重ねたとしても、水中に抱いた鈴の存在は決して消し去れはしない。水の性質だけでは、視覚は完全には遮断できないんだ』
「……言
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