純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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っている筈なのに、ペンダントの石にはじんわりと浸透するような温かさを感じる。何故かおばさまの手よりも温かい気がするわ。
「だろう? こいつはメルエティーナ領内の鉱山で採掘されてる岩石なんだが、外気に触れると少々熱を上げる性質があってね。街を見れば分かる通り、此処らの住民は昔からこの石材に生活を支えられてるんだよ。生活必需品だからこそ、他に使い途が無いくらい小さな石でないとなかなか北方領外へは持ち出せないがね。その分、こうして細工師が加工した装飾品は、我が街自慢の特産品なのさ。素朴な造形だから持ち主の性別は選ばないし、土産にはピッタリだろう?」
外気に触れると熱を上げる石……街中に雪が殆ど積もってなかったのは、この石を家の壁や石畳に使っているからなのね。そんな物がこの世界に在るなんて初めて知った。興味深いわ。
「面白いですね。それに、六花の飾りも細部まで凝っていてとても綺麗」
「こっちの飾りは、「ラリマー」って宝石を削り出した時の屑石を寄せ集めて成形した物だよ」
「……寄せ集め? 成形?」
「大雑把に言えば、専用の型に屑石と樹脂を流し込んで固めるんだ」
「型を使う……つまり、これと同じ形の物が他にも在るんですか!?」
「うちだけでも五本はあるよ」
「凄い! こんな、手のひらに収まる小さくて繊細な細工物なのに、同じ物が何個も作れてしまうなんて……!」
「気に入ったようだね」
「はい、とても! ……あ、でも……」
「? 値段の心配かい?」
「いえ、そうではなくて」
俯いて思案する私に、おばさまの目蓋が忙しく開閉を繰り返す。
「えと、外気に触れると少しだけ熱が上がるんですよね? それって、南の大陸みたいな暑い地域に付けて行ったら、火傷とかしちゃいませんか……?」
「………………うーん……」
私が贈った装飾品で傷を負うなんて、シャレにならない。
杞憂に終われば問題無いのだけど、おばさまは困ったように苦笑いを浮かべた。
「多分だけど、中央大陸からは輸出されてない筈だよ。さっきも言った通り、生活必需品だから北方領の外へはなかなか持ち出せなくてね。よく行って南方領かバーデルか……。私も生まれてからずっとメルエティーナ領で暮らしてるし、暖かい地方でどうなるかまでは保証できないな。今の所、この石で火傷したって話は聴かないがね」
「そうですか……」
お土産としてはこの上無く魅力的でも、危険性があるなら安易な手出しは控えるべきね。
「では、そちらは候補として覚えておきたいと思います。他にもおすすめがあれば是非とも教えていただけませんか? 此方のお店で無かったとしても、お知り合いのお店を紹介していただけるとありがたいです」
「おやおや、本当にしっかりしたお嬢さんだ。分かった。これは特
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