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ある晴れた日に
670部分:炎は燃えてその十四
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遅くだった。
「帰ったのね」
「ああ」
 家の奥の方からの声に答えるのだった。
「今な」
「そう。御飯あるから」
「わかった」
「電子レンジであっためなさい」
 また彼に言ってきた。
「いいわね」
「悪いな、置いてくれていて」
「何言ってるのよ。当たり前でしょ」
 それは当然だというのだった。その言葉は。
「家族なんだから」
「家族だからか」
「そいうことよ。わかったわね」
「じゃあ貰うな」
「たっぷりあるからね」
 量についても言ってきた。
「お風呂もあるから」
「俺が最後だな」
「そうよ。だから栓は抜いて掃除はしておいてね」
「ああ、それじゃな」
「お母さんはもう寝るから」
「親父は?」
「もう寝たわ」
 玄関と家の奥、それぞれの場所から話す。正道は今ギターケースを置いて靴を脱いでいるところであった。もう鍵は閉めている。
「今さっきだけれどね」
「そうか」
「あんたも御飯食べてお風呂に入ってね」
「わかっている」
 それは言うまでもないと返すのだった。
「早く食べてそうしてな」
「何でも休憩も必要よ」
 そうしたことも言ってきた母だった。
「いいわね。それじゃあ」
「そうだな。それではな」
「お休み。お母さんも寝るわ」
「ああ」
「何をしてるのかはあえて聞かないけれど」
 最後に母は言ってきたのだった。
「頑張りなさい、最後までね」
「最後までか」
「一旦決めたら最後までやる」
 いささか道徳的な言葉も出て来た。
「それがあんただからね」
「だからか」
「そういうあんただから今回も最後までやりなさい」
 自分の息子をわかっていた。それがはっきりとわかる言葉であった。
「いいわね」
「済まない。それではだ」
「これで本当にお休みよ」
 声だけだった。しかしその声には愛情が入っていた。親としての愛情がである。そこには確かに含まれているのであった。正道はそれを感じながら一日の終わりを迎えるのだった。


炎は燃えて   完


                 2010・1・11

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