669部分:炎は燃えてその十三
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炎は燃えてその十三
「少しずつね」
「そうか。少しずつか」
「喋ったのよ」
奈々瀬の声は少し興奮していた。74
「今ね」
「喋ったのか」
「そこまで戻ってきたのよ」
そのうわずった声で話していく。
「本当にね」
「そうか、それもあるな」
「本当に少しずつだけれど」
奈々瀬はその言葉を続けていく。未晴をじっと見ながら。
「未晴も必死に頑張って。それで」
「確実に元に戻ってきてるな」
「それだったら」
「このまま」
「やっていく」
皆に続いてまた言う正道だった。
「これでこいつが戻るならな」
「そうよね。そうしよう」
「皆で」
皆こう言い合う。
「それで未晴を迎えようよ」
「クラスにまた」
「学校に戻ってくれるから」
「絶対に戻って来る」
正道はもうそれを確信していた。
「俺が連れ戻す。絶対にだ」
「ああ、絶対にだな」
野本がその言葉を真面目な顔で聞いていた。
「言ったな」
「二言はない」
「よし、俺も連れ戻す」
そしてそれは彼もだというのだった。
「俺もだ。そうする」
「俺もだ」
「俺も」
「当然私もよ」
「そうよ、私もよ」
そして彼だけではなかった。皆もだった。
「未晴、いいわね」
「教室でね」
「絶対に会おうな」
こう話していくのだった。彼等は今決意をあらたにしていた。
しかしであった。その彼等の前を一台の車が通った。そこにいたのは。
「あれっ、あの娘は」
吉見哲也だった。彼が車を運転しているのだ。
そこから見てである。未晴が目に入ったのである。
「ふうん、捨てたと思ったらそこにいたんだ」
こう言ってである。邪悪な笑みを浮かべ一旦去った。そうして家で。
「ねえパパ」
「何だ?」
父に話しているのである。家の中で向かい合ってテーブルに座りだ。そのうえで食事を摂っている。それは羊の脛肉を煮たものとシチュー、それにサラダだった。
それを食べながらだ。父に言ってきたのである。
「おもちゃを見つけたよ」
「おもちゃを?」
「そうさ、見つけたんだよ」
笑いながら話すのだった。
「ほら、前に捨てたおもちゃね」
「多過ぎてわからないが」
「そのうちの一つだよ。小さなおもちゃをね」
「とにかく多くてわからないがそれを見つけたんだな」
「そうだよ。それでね」
「どうするんだ?その見つけたおもちゃを」
「また楽しもうかな」
そうしようかというのである。
「またね。どうかな、それで」
「好きにしたらいい」
父は息子の言葉を冷静に聞きながらそのうえでシチューをスプーンで飲んでいる。それは白いミルクのシチューで中には白身魚と人参、それに玉葱とジャガイモがあった。それを食べながら息子の言葉を聞いているので
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