§7 欧州の大魔王、襲来
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は魔王、何を言っても無駄だろう。
「私を探りに来たのだろう? はるばるご苦労。君は私の名を知っているだろうが私は知らぬ。名乗ってもらえるとありがたいのだが」
こちらの心情など露知らず、対面する後輩はこちらの素性を問うてくる。人に名前を聞くときは自分からだろう、と言ってやりたいが、ここで機嫌を損ねるとこの後の交渉が上手くいかなくなりそうなのでグッと我慢の一言だ。
「……水羽黎斗。僕は貴方を見なかった。貴方は僕を見なかった。僕はここを去る。それで手打ちにしよう」
「貴様は何を言っている? ……まぁ良い、もし私から逃げ切れたら今夜のことは忘れてやろう。せいぜい私を楽しませろ」
フードをとり、相手を見つめる。交渉が上手く行き過ぎて、黎斗としては少し怖い。
「その言葉、二言はないね? 明日までに見つけられなかったら今回の件は忘れてもらうよ」
「私を誰だと思っている? そしてその条件でかまわんよ。それよりも本当に私から逃れられると思っているのかね?」
余裕の表情を崩さない相手。隙は全くないので戦うのは苦労しそうだが逃げるだけならなんとでもなる。
「楽勝だね。」
死人の投擲した槍が黎斗を貫こうとして???すり抜けた。
「ほう」
相手の気配が、余裕から警戒へと変わる。
「これは、お返しだよ」
声と同時に飛来する短剣が寸分違わず従僕達を貫いていく。様子見程度の意味合いだ。だが、これをそれなり扱いできるものが、果たして何人いることか。
「ぬうっ!」
ヴォバンは自身に向けられた数本を雷撃で残らず撃ち落とす。迎撃に間に合わずなんとか逸らした一本が、彼の襟元を少し裂いた。
「あら、外したか」
「くっ……!?」
余裕そうな態度にヴォバンは歯噛みするが、できたのはそれだけだった。目の前でふらふらしている相手は、とてつもなく強い。本能がそれを感じている。何気なく放ったのであろう短剣の数々は、彼にとっても看過できないものだった。それを、あれほど容易く。油断無く黎斗を見つめるヴォバンだが、彼との邂逅はあっけなく時間切れを迎える。
「じゃあね。せいぜい頑張って探してちょうだいな?」
黎斗の体が、闇と同化していく。同時に撒き散らされる邪気が、コンクリートに刺さった槍を灰に帰していく。黎斗の言葉を最後に、完全に消失してしまう。
「……!?」
流浪の守護はその瞬間、解除されていた。アーリマン、夜の権能は悪の最高神としての能力。闇と同化し、周囲に邪気を撒き散らし、生命の命を奪い去る。長く浴びればまつろわぬ神ですら命を奪えてしまうその凶悪な力は流浪の守護で抑え切れなかったのだ。完全に
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