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ある晴れた日に
650部分:悪魔その十一

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悪魔その十一

「この曲はな」
「終わりは決まったと思う」
 彼はまたいった。
「絶対に。決まった」
「じゃあ聞くわ」
 咲は彼の後ろから問うた。
「その終わりはどういったものなの?」
「ハッピーエンドだ」
 それだというのである。
「それになる」
「わかったわ」
 それを聞いただけだったが。咲は満足した声を返した。
「それでね」
「これでいいんだな」
「充分よ、それで」
 もうそれでいいという咲であった。
「咲も。そのつもりだから」
「だよな。動いたんだよ」
「それだったら」
「もう答えは出てるよな」
「未晴は立ち上がる」
 正道はもう己の中でその答えを見つけ。それを目指していた。
「そして元の通りになるんだ」
 言いながらその曲を奏でる彼だった。それが見舞いの時のことだった。
 それが終わってからだ。正道以外の面々は猛虎堂にいた。そこでまた飲みながら話をしていた。今度は串カツを食べながらビールを飲んでいた。
 場所は円卓を囲んで、である。そうしながら話していた。
「あいつ、やっぱりな」
「ああ」
「会ったよな」
「絶対にな」
 正道の話をするのだった。だが話すことは彼についてだけではなかった。
「あいつとな」
「間違いなくな」
「今朝ね」
「それでか」
「あの曲を」
 察しがついてきた。次第にである。
「今朝、そして見舞いの時に」
「奏でたんだな」
「だろうな、それでか」
「私達にも未晴にも」
「それを見せて」
「なあ」
 カウンターから佐々が皆に言ってきた。
「あいつな」
「あいつか」
「あいつね」
 『あいつ』はここでは二人いる。しかしここではもう一人のことをさしていた。
「確かにとんでもない奴だな」
「そうね」
「それはね」
 これは誰もが認めた。否定できることではなかった。
「けれど。俺達全員じゃ何とかならないか?」
「何とか?」
「なる?」
「ああ、なるんじゃないのか?」
 こう皆に言うのである。
「今朝は動けなかったけれどな」
「それでもあいつを」
「何とかできる」
 確かめ合う言葉だった。
「次は」
「そうね」
「きっとね」
「今は無理でもな」
 ここでまた佐々が皆に言ってきた。
「最後にあいつに向かえればそれでいいんだろうな」
「最後で」
「そうしたら」
「ああ、最後だよ」
 彼はここでは最後ということを強調するのだった。
「最後に笑ってればそれでいいじゃんじゃないか?」
「そうだよね」
「それは」
 皆彼の今の言葉に頷いた。

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