第十二幕その十
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「素敵な味ね」
「幾らでも食べられるね」
「そんな感じね、それでお酒ともね」
「合うね」
「日本酒と一緒に食べると」
その湯豆腐をです。
「どんどん食べて飲めそうよ」
「それが湯豆腐なんだ、そしてね」
「そしてっていうと」
「日本の泉鏡花や太宰治といった作家さん達も好きだったんだよ」
「ええと、どちらもはじめて聞く人達ね」
サラはお二人の名前を聞いて目を瞬かせました。
「ちょっとね」
「知らないんだね、二人共」
「日本の作家さんで知っている人は」
サラが知っている人はといいますと。
「川端康成は知ってるわ」
「雪国の人だね」
「ノーベル文学賞のね」
「うん、その人は世界的に有名だね」
「けれどね」
それでもというのです。
「他の人は紫式部は知っていても」
「源氏物語の人だね」
「これといってね」
「うん、まだ日本文学は世界に知られていないね」
「私が文学に疎いだけかも知れないわよ」
「いや、そのことを最近感じているんだ」
こうサラにお話しました。
「僕もね」
「日本文学のことを」
「世界的にまだね」
「知られていないっていうのね」
「日本はかなり有名な国だね」
「ええ、経済的にも文化的にもね」
「メジャーな国の一つと言っていいね」
世界の中でというのです。
「太平洋だと日本、アメリカ、中国だね」
「大体その三国よね」
「アジアでも凄く有名な国の一つで漫画も有名だね」
「けれど文学もなのね」
「そう、凄いから」
サラに湯豆腐を食べつつ御話します。
「是非ね」
「もっと知られるべきだっていうのね」
「泉鏡花も太宰治も。特にこの前僕は泉鏡花の論文も書いたし」
「どんな作品を書いた人なの?」
サラは具体的に尋ねました。
「それで」
「僕は天守物語という作品についての論文を書いたけれど妖怪や幽幻の世界を書いた」
「妖怪、イギリスで言う妖精ね」
「そう、その妖怪や人間の恋愛を書いたりしたんだ」
「ファンタジーな世界ね」
「言うならファンタジー作品の草分けかな」
「そう聞くと」
サラはおちょこでお酒を飲みつつ言いました。
「トールキンさんみたいなものね」
「言うならそうだね、日本のね」
「ファンタジー作家だったのね」
「明治から昭和にかけて活躍したね」
「日本はその頃からファンタジーのジャンルがあったのね」
「そう思うと凄いね」
「漫画やゲームだけじゃないのね」
また言うサラでした、ご主人のお碗にお豆腐を入れてあげながら。
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