第十五話「戦いの後」
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彼女が目を覚ました時最初に感じた感情は困惑であった。
自身の最後の記憶では木々が生える街道の近くにいたはずだが彼女の目の前に広がるのはかなり広い部屋であった。しかも彼女が寝ている部屋だけで普通の家の部屋の数倍近い広さを誇っているためかなりの豪邸である事が伺えた。
そして彼女の体には丁寧に包帯が巻かれておりその上から黒いネグリジェを羽織っていた。銀色の髪と相まって人形の如き美しさを醸し出していたが残念な事にそれに気付けるものはここにはおらず彼女も未だ上手く動かない体のせいで上半身をもと揚げるのが精一杯であった。
「確か、あの後私は…」
彼女はそこでハッとなり窓を見る。窓に映る景色は快晴で彼女が最後に見た夕暮れに近い時と比べて少なくとも最低半日は寝ていたことを悟る。
「…間に合わなかったか…」
自らの目的の為にどうしても会わなければならなかった相手。会談が行われると聞きその場に乗り込もうとしていた彼女にとってそれを逃すのはかなり不味かった。
「…やはり、直接聞くしかないか」
普通に聞いてもしらばっくれるだろうと思いつつ彼女が今後の行動を経てていると部屋の扉が開いた。
「…あら、目が覚めていましたの」
扉が開いた先にいたのは長髪の美女であった。手には替えの包帯や汗を取るためのタオルなどが置かれたトレイを持っており彼女の世話をしてくれていた事をうかがわせた。
「この包帯は貴方が?」
「はい、あんな所で倒れていた貴方みたいな奇麗な人を放っては置けませんから」
彼女が寝ているベッドの隣にある椅子に座った美女はそう微笑む。一瞬頭にちくりとした痛みが走るも彼女はそれを表には出さずにお礼の言葉を口にする。
「…世話になったみたいだな。礼を言う」
「いいえ。気にしないでください。今はしっかりと体を休めてください。その間はこの家に居て下さって結構ですから」
美女は彼女の両肩を優しく掴みそのままベッドへと押し倒す。霊力の大半を失い体力を大きく消耗している彼女は抵抗する間もなく押し倒された。
「…あ、自己紹介がまだでしたね。私は十六夜美九と言います。貴方の名前は何と言うのですか?」
「私は…ない、名前など」
何故ないのか。元からなかったのか?それとも忘れてしまったのか?それすらもう彼女は思い出す事は出来ない。精霊になってから早十数年が確実に経過しており自分の記憶を全て失っていた。覚えていたのはある目的。彼女の心に深く抉るように刻み込まれたその目的だけは覚えていた。
彼女はその目的を叶えるため、そして自分の正体を知るために今まで行動してきた。
そしてついに自分の正体に繋がるであろう一歩も自らの自業自得により失敗し今こうやって弱々しく体を横たえていた。もしこの状態
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