暁 〜小説投稿サイト〜
ユア・ブラッド・マイン 〜空と結晶と緋色の鎖〜
第3話『虎徹山』
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「無理……もう無理……折れる……」

 如月が音をあげたのは電車を降りてわずか数分後のことだった。まだ駅から100mも離れていない。
 虎徹山への最寄駅、最近出来た駅らしく駅名はシンプルに虎徹山駅。そこで電車を降りた写真部の面々は、虎徹山への道を歩いていた。

「はいはい、それもう10回は聞いたよー」

 このやり取りももう10回は聞いている。その度に輝橋が励まし、水分補給をしていた。今もまた、カバンから如月用のスポーツドリンクを取り出したところだ。

「速く来ないと置いてっちゃうよー?」

 それとは対照的なのが天野だ。元気に走り出したと思うとしばらく進んだところで振り返り、こちらを待っている。

「天野。 あまり団体行動を乱すな」
「っていうか飛鳥、道わからないでしょう?」
「あー、うん。 わかんない」

 天野の言葉に思わず苦笑する。 立奈の方はどうかと目を向けてみると、彼女も笑みを浮かべていた。

「? どうかしましたか?」

 視線に気づいた立奈はこちらを見上げて首をかしげる。

「いや……立奈は大丈夫か?」
「はい。 こう見えて体力には自信があります」
「うん、それは知ってる」
「どういう意味ですか?」
「立奈は部活の仕事も率先して手伝ってくれるからな」

 陸上部と兼部の立石やプロ・ブラッドスミスとしても活動している輝橋はどうしても部活に顔を出す機会は少なくなる。
 そんな二人に変わって、立奈は部活動において生じる雑務の処理を手助けしてくれていた。

「輝橋、あとどのくらいだ?」
「んー? あとは道なりに進めばいいだけ。 なんなら置いてってもらっていいよ」
「ホント!? んじゃ勇気、競争ねー!」
「ちょっ、飛鳥!?」
「あ、こら! 天野!立石!」

 駆け出す天野とそれを追う立石。 その遥か後方では……

「ねぇマイエンジェル。 しゃがんだ方が暑いと思うよ?」
「無理……立てない……」
「あらあら……少し休んだ方が良さそうですね」

 道路にしゃがみ込む如月とそれを介抱する輝橋。 団体行動も何もあったもんじゃない。

「燕ちゃん、私と輝橋くんでしばらく如月さんを見ておくので先に行ってて貰えますか?」
「……仕方ない。 天野と立石を放っておくわけにもいかないしな」
「草場ー。 最悪おんぶして行くことになると思うから……」
「荷物だろ? さっさと寄越せ」
「あざっす! 今度なんか奢るわ」

 立奈と手分けして輝橋の荷物を担ぐ。 軽く雑談を交えながら既に天野たちの背中の見えなくなった道を歩いていると、視界の端で何かが動いたような気がした。

「……?」
「どうかしましたか?」
「今、何か……?」

 道の脇には雑木林がある。 その雑木林
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