第3話『虎徹山』
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の中に何かがいた気がしたのだ。 人だったような……それにしては妙な形をしていたような……
しかし、目を凝らして探してみても何も見つからない。
「……何もないぞ?」
製鉄師として玲人よりも数段鋭い感覚を持つ燕が言うのだから、やはり何もないのだろうか。
首を傾げつつも、気を取り直して再び虎徹山へと進む。
立奈と雑談しながら歩く玲人の目に映るのは、のどかな街並みと、雄大な山と……
「いっちばんのりー!」
窓の外から声が聞こえる。 聞き覚えのない女性の声だ。
「飛鳥……急ぎ過ぎ……はぁ……」
続いて、やはり聞いたことのない声。 そういえば、両親が今日泊まりに来る客がいるとか言っていたような気もする。
「みんなー、早く早くー」
これは最初に聞こえた女性の声か。 他にも同行者がいるらしい。
「これが若さか……」
「同い年でしょ。 羽音ちゃん達は?」
「如月先輩が歩けないみたいで、まだかかると思います」
聞き覚えのある名前が出てきた気がする。 しかし、布団から這い出る気力が湧かない。
とにかく、まだ増えるのか。 騒がしいのはあまり好きではない。
「手助けに行った方がいいですかね?」
「いや、大丈夫だろ。 荷物はこっちで預かってきたしな」
「それに宇宙も付いている。 暫く待っていよう」
「はーい」
その後も他愛のない世間話などが聞こえてくる。 せっかくの夏休み初日をのんびりと過ごそうと思っていたのに、これでは声が煩わしくて寝ていられない。
それでも、まぁ自分には関係のない事だ。 布団から起き上がる気にはならない。
「あ、見えた。 おーい! 遅いよー!」
どうやら残りの同行者が到着したらしい。 そういえば、今日は知り合いが来るって言ってたような。 だとしたら、この遅れてきた人物がそうなのかな。
未だに半分眠っている頭でそんな事を考える。
「いやーごめんごめん。 マイエンジェルがリタイアしちゃって」
ガバリと上体を起こす。 物凄く聞き覚えのある声だ。
一刻も早く声の主を確認しようと窓を開き、身を乗り出す。 外には6人の中高生らしき人物と女性がいた。 恐らく彼らが両親の言っていた宿泊客だろう。
さっきから大きな声を出していたと思われる少女。 疲れ果てて肩で息をしている少年。 他より幾分背の低い少女と、多くの荷物を抱えている少年。 そして高身長で釣竿のようなケースを持った女性。 彼らに見覚えはない。
ならばと視線を道の先へと移す。 そこに、いた。
少し離れた場所から彼らに近づいてくる少年。 その姿が目に入ると、自然と笑みが浮かぶ。
「大翔!!」
思わず大声で少年の名前を叫ぶ。 声に気づいて顔を
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