忘却はよりよき前進を生むが、それを言ったのがニーチェなのかフルーチェなのかはわからない話
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
くないとも思った。
(あいつ私服姿もよかったな。きっちりしてた。俺なんかと違って、家でもちゃんとしてるんだろうなあ)
そうやって総一郎の姿を思い返していたら、乗り過ごすところだった。
ギリギリでなんとか電車から降り、隼人は家へと帰った。
一日だけではやりきれなかったため、隼人は翌日も総一郎の家に行き、勉強のやり方を教わった。
そして、追試の追試の追試を受けた――。
「総一郎!」
朝の電車で、乗ってきた総一郎を見るなり、隼人は立ち上がってしまった。
「どうした?」
席の前に来た総一郎が、とりあえず座れ、と両肩を押さえてくる。
座り直しながら、隼人は報告をした。
「やったよ!」
「ん?」
「追試、全部通った!」
すると彼も、怜悧な顔をわずかにゆるめた。
「そうか。よかった」
「追試の問題、全部見たことがあるような問題に見えた!」
「ああ、そうなれば勝ったも同然だ。きちんと準備さえできていれば、学校のテストというものは、それまでに用意した引き出しを開けるだけだ。頭を使う問題など実はほとんどない」
「お前、すごいよ! ありがとう」
「おめでとう。君が頑張った成果だ。僕は一回で変われた君がすごいと思う」
今度は総一郎のほうから、手を差し出してきた。
隼人はその白い手を強めに握り返し、そのまま彼の顔を見た。
微笑のレベルからは逸脱していない。だがなんとなく、彼も心の底から喜んでくれているような気がした。
そして、彼が褒めてくれた。それが隼人には嬉しかった。
「先生やクラスメイトからも反響があっただろう?」
「めっちゃあった! 褒められたし、明日は大雪が降るとか言われた!」
「そうなるとやる気が出るから、次も点が取りやすくなっていく。しばらくはその好循環が続くようにしたい。期末テストも対策法を伝えたいので、今週中にまたうちに来てほしいけど、どうかな?」
「ぜひ! ぜひぜひ! ぜひ頼む!」
「じゃあ決まりだ。また先生やクラスメイトに褒められるようにがんばってくれ」
「ああ! またお前に褒めてもらえるようにがんばるよ!」
改札を出てからも、高揚感は止まらない。
(期末もがんばろっと)
また彼の家に行くことができる。そう思うと、自然と足取りも軽くなる。
いつもよりも早く校門までたどり着いた。
(よーし。勉強の第一歩はイマジネーションと……あれ、なんだっけ? なんとかベーション……マスターベーションだっけ? もう忘れちまった……。明日あいつに確認しよっと)
隼人は空を飛んでいるような感覚で、学校の敷地へと入った。
(『忘却はよりよき前進を生むが、それを言ったのがニーチェなのか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ