忘却はよりよき前進を生むが、それを言ったのがニーチェなのかフルーチェなのかはわからない話
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可能だが、都合のよいことに、自分の家は彼の通学経路上にある。部活の帰りに途中下車で家に寄ってもらい、自室で勉強を教えることが可能だ。
先日名前も交換し、挨拶および通常の会話は毎日交わしている。もう知り合いと……いや、友人と言ってよい関係。自宅に呼んでも問題はないはず。
(よく考えたら、『合格点』などで満足していてはダメだったな)
実際に取れるかどうかはまた別として、『百点』を目指すべきだった。十割を目指して初めて九割の得点が取れる。今のようなときは話を聞くだけでなく、ソリューションまで提供しなければ百点を目指す姿勢としては疑問符がつく。
ここでもう一歩踏み込むべきだ――。
俄然やる気が出た総一郎は、瞬時に口説き文句を作成した。
「隼人君。君の頭が悪いなどという事実はないと思う。だが現状のままでよいのかと言われると、やはりよくはないのだろう。その調子ではまた追試に落ちる可能性は高いだろうし、来月に始まる期末テストも赤点になるだろう。そこでも赤点ならまた追試地獄だ。いつまでたっても解放されず、寝不足が続く。そうなれば野球の練習にも影響が出てくるだろうし、早急な対策が必要かもしれない」
まずは、彼に申し訳ないと思いながらも不安を煽った。
悪い商売でもよく使われるやり方だと聞いていたが、よく使われるということは、効果的だということに他ならない。自身の提供するソリューションで彼を救うという目的がはっきりしている今、使わない手はない。
「そ、そっか。お前の言うとおりだろうな。あんまり考えたくないんで考えないようにしてたけど。やっぱ不安だよ」
「なるほど。では君に提案がある。僕が君に勉強のやり方を教えるというのはどうだろうか?」
そして次は、『ここだけのいい話』に聞こえるような提案をおこなう。これも商売でよく使われる方法だとされている。
「えっ、お前が俺を?」
彼はわかりやすく驚いた顔をした。
「そうだ。僕はこれでも学年一番をキープさせてもらっている。学力的には君を教える資格があると思う」
「ええ!? 頭よさそうだとは思ってたけど、あの学校で一番かよ! すげえな……。でも教えるって、どこで?」
「僕の家を使おう。君としては帰りに途中下車するだけだし、地理的な条件は悪くないはずだ」
「えええ!? い、家?」
彼がさらに驚いている。
最後に、その場で決断をさせることが大事になる。絶対に提案を持ち返らせてはならない。
「この提案は迷惑かな?」
「いやいやいや! こっちが迷惑なわけないだろって!」
彼は慌てたように、胸の前で両手を振る。
「逆にお前が迷惑じゃないのか? 俺なんかに時間使って平気なのか?」
「懸念はその点だけだな? ならば僕は全然迷惑ではない
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