忘却はよりよき前進を生むが、それを言ったのがニーチェなのかフルーチェなのかはわからない話
[2/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
合うと同時に消し飛んだ。
彼の頬がやや赤く染まっていたためである。
(ああ、だめだ。これで困惑するのは彼に失礼だ)
総一郎は頭の中をニュートラルに戻した。
目の前の彼は、本当に恥ずかしそうに言っているように見える。彼はこちらの問いに対し、ごまかすことだってできた。なのに彼はそうしなかった。
弱みを晒し、自身でも恥ずかしいと感じていたことを言ってくれた――それは信頼の証でもある。
(今突きつけられている状況。これはきっと天が授けた試験に違いない)
彼は信頼の証を見せてくれた。
そして今、自分はそれに対する返し方を試されている状況だったのだ。
言うなれば天からの一学期中間試験。ここで赤点を取っているようでは二人の仲に未来はない。
(危なかった)
総一郎は、意識的にぐっと顔を引き締めた。
彼の信頼を裏切ることがあってはならない。ここは正確かつスピーディなフォローで応えるべきだ。
「隼人君。この前ネットで見たデータによれば、高校野球部の週当たりの平均活動日数は6.6日。これは全種目の中で最高の数字だ。そして平日一日あたりの平均活動時間は3.4時間で、やはり最高。休日一日あたりの平均活動時間に至っては7.7時間で、二位のバレーボール部4.9時間を大きく引き離し断トツの一位。君の学校も例外ではないのだろう?」
ニュースサイトや新聞の閲覧で築きあげてきた頭の中のデータベースを高速検索し、具体的な数値を出した。
野球部はとにかく勉強に充てられる時間がない。それが他の部活との差であり、ディスアドバンテージなのだ。
「そんな数字よく知ってるなー。ま、うちも多分例外じゃないけど」
「そうか。ならば学業が犠牲になるのは仕方のない部分もある。赤点は断じて恥ずかしいものではない」
(よし。フォローは完璧だ。『合格点』は取れただろう)
内心でニンマリした総一郎だったが、そこでこの話は終了とはならなかった。
隼人はさらに返してきた。
「でも、できるやつもいるからなあ。俺、頭悪くってさ。困っちゃうよな」
「……」
困っちゃう。
アハハと照れ笑いする彼を前に、その彼の言葉が総一郎の中で残響する。
(これはSOSサインか)
彼は勉強ができなくて困っていると言っている。
そう。困っているのだ。
相手が困っていれば……。
(助けるのがパートナーというものだろうな)
幸いにも、自分は入学以来、学年一番をキープし続けている。自分で言うのは気がひけるが、勉強ができると言っておそらく間違いはない。ここで彼を救う役は、自分が最適……
……いや、自分以外にありえないのではないか? 総一郎はそう思った。
学校が違うので教室で教えることは不
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ