第五話 高等部入学式
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よー? 『模擬戦無敗の候補生』『中等部の王者』あとは君の彼女ちゃんも有名人で、それにくっついてるからねー」
「彼女じゃない、幼馴染です」
「そこに反応しちゃう? ま、中等部からいるんだし上級生の大半は君のこと知ってると思うよー? あ、もちろん珠充冴空ちゃんのこともねー。あ、引き留めちゃってごめんね、イッテイーヨ」
「そうですか。後は頼みます」
一礼して氷絃は保健室を後にした。既に他の生徒たちは教室に戻っていったようで、氷絃は早足で階段を駆け上がり教室に到着。後ろの扉を開けるとクラス全員の視線が氷絃に向けられる。
「すみません、碧周さんが貧血だったみたいで保健室に連れていってました」
「おう、そうか。ご苦労だったな阿國。碧周は貧血で保健室か……とりあえず席に着いてくれ」
「はい」
氷絃は左端の前から二番目の席に着く。前の席に座るのは静流だったので今は空席だ。そこから担任の簡単な自己紹介と中等部上がり限定の課題回収、翌日からのテスト日程の確認をしてその日は解散となった。
「氷絃くん、帰りましょう!」
「おう」
男子生徒からの恒例の視線を受けつつ、氷絃は冴空と共に帰路についたその途中
「氷絃くん、交流会で助けた女の子って碧周さんだったんですか?」
「ああ、そうだ。よくわかったな」
「入学式前から親しそうだったので」
「そんなに親しく見えてたか?」
「はい。ちょっと嫉妬しちゃいそうなくらい」
「……意外だな、冴空も嫉妬するのか」
「むぅ、しますよ!」
冴空は頬を膨らませてちょっと怒り気味な声で氷絃の疑問にそう答える。そんな冴空も可愛いなと氷絃は思いながら「悪い悪い」と言ってるうちに女子寮に着いた。
「もう着いちゃいました……氷絃くんと話してるとあっという間ですね」
「そうだな。冴空と一緒だと時間の流れが早い」
「それじゃあ、また明日です!」
「おう、また明日な」
別れの挨拶をして氷絃は男子寮を目指して歩きだす。その時、朝の「違和感」がまた氷絃を襲った。
佇む『誰か』は氷絃の視界からは消えていない。だが、視界の許す限り──端に存在する。視線を動かしてもまだ端にいる『誰か』を追いかけると氷絃の顔は真後ろを向いた。そして『誰か』は冴空のいる方向に収まり、視界の端に移動することはなくなった。つまり──
「……なるほどな『歪む世界』も冴空に執着してるってことか」
氷絃がゆっくりと振り返ったことに首を傾げた冴空はニコニコと再度氷絃に向けて手を振る。それに応えて氷絃も手を振って、今度こそ男子寮へと帰った。
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