第五話 高等部入学式
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めて見たから」
「いや、別に気にしないからいい。それより、交流会ぶりだな碧周さん」
隣の少女は交流会で男子に絡まれているところを一応、助けた碧周静流だった。
「そうだね。あの時はありがとう。おかげで交流会も楽しく参加できて……」
「それはよかった。良さそうな相手は見つかったか?」
「一人だけ……かな?」
「そうか。お互い頑張ろうな」
「う、うん」
氷絃はそこで会話を切り上げた。そして第一体育館に入場して入学式が始まった。
式は滞りなく進み、黄劉学園長の話は学園長とも思えない短く纏まったもので済み、特に何事もなく終わった。
「案外、あっさり終わった……聖境って名門のお金持ち校ってイメージが強いから意外……」
「聖境は黄劉学園長が就任してから削れる時間は削って余った時間を製鉄師育成に使うようになったからな。苦情はあるらしいが、その分実績があるからこの形式は変わらないだろうな」
「そうなんだ。阿國君、詳しいね」
「これでも三年長く在籍してるからな」
静流の呟きに氷絃は細かく答える。それらは中等部に在籍して代替わりに丁度入学したからそのゴタゴタを知ったのだ。
「代わりにPTAの話は長いけどな」
「そう、だね……」
「大丈夫か? 顔色悪いぞ」
「あ……うん、ちょっと貧血気味で──」
言い切る前に、静流の身体は力が抜けたかのように氷絃の方へ倒れこむ。それを氷絃は受け止めて抱きかかえる。
「……! 大丈夫か!?」
その呼び掛けに静流は応えることができなかった。顔色は優れず、意識が朦朧としているのがわかった。
「保健室だな……」
教室に戻ろうとする人混みの間を抜け、氷絃はすぐ近くの保健室まで彼女を運んだ。ついさっきまで入学式をやっていたため養護教諭は不在だ。
「んー? あ、どうしたのー? サボりー?」
そんな暢気な声が三つあるベッドの一つから聞こえてきてひょっこり一人の女子生徒が顔を出す。顔しか出していないため黒髪の絡みやすそうという印象を氷絃は抱いた。
「いや、一人貧血で倒れたから運んできました。ベッド空いていますか?」
「空いてるよー。ありゃ、顔真っ青……とりあえず暖かくして先生待たないとねー。ほら早く来て来て、よし。お疲れ様ー」
「ありがとうございます、先輩」
「あれ? なんで知ってるのー?」
「一年は全員式に参加してたんで。あと保健室に慣れてる雰囲気だったので」
「あったりーん。PTAの顔見たくないし、怠くてサボっちゃったのよねー。それじゃ、あとは任せてよ新一年生の阿國氷絃くん?」
その言葉にピクッと氷絃は反応する。何故自分の名前を知っているのか、目の前の上級生とは初対面のはずだと。
「君ってそこそこな有名人だ
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