五話〜盤外戦後編と新たな戦い
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その後、八一を挟んで尚も喧嘩をしようとした二人に、流石に八一は突っ込んだ。
『二人とも、少し静かに』
声を荒らげたわけでも、怒鳴ったわけでもない。
だが、八一の声に込められた、『圧』のようなものに、二人は一瞬で、『気を付け』の姿勢をとる。
はぁ、と溜息一つついて、八一は続ける。
「まず、あいちゃん、着替えなきゃ風邪引いちゃうよ。後でこのお姉さんとの関係は話すから、直ぐに更衣室戻りなさい」
「…………師匠…………はい…………」
何か言いたかったようだが、師匠と呼ぶ自分の面目を考えて、すぐにあいちゃんは更衣室に戻ってくれた。
そして、姉弟子…………つまり銀子にも、先程の強い言葉とうってかわって、優しい言葉を紡ぐ。
「話は聞きますから…………机で話しましょう?」
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事情を聞いた八一は、頭を抱えた。
「どんな事故が起これば、そんな捻れた伝言ゲームを起こすんですか…………姉弟子」
その八一の言葉に、流石にばつが悪そうな顔をして銀子は返す。
「だって…………八一が心配で…………」
その言葉に、八一は苦笑する。
八一が銀子を『姉弟子』というのは、恩師に先に弟子入りしていた事もあるが、根本には、銀子の世話焼き癖がある。
八一が今の立場につく前、もっと心身共に弱く、情けない男であった時。
その時も、銀子は八一を心配して、様子を見に来たり、活を入れてくれた。
だから、彼にとっては、例え年下でも、銀子は『姉弟子』なのだ。
「という訳で、姉弟子に話した通り、疚しいことはございません」
きっぱりと話す八一に、銀子は小さく、コクコクと頷く。
「分かった。『八一は』信じる」
言外に弟子入り志願のあいを信じないというスタンスに、八一は正直、戸惑った。
おかしい?そんなに頑なだったかな?
「姉弟子?いくらなんでも八歳の女の子に対してその態度は…………」
そう困って口にする八一の肩を、ガッと掴んで銀子は言う。
そう、わざわざ顔を近づけて、八一に教え諭すように。
「八一…………幾つでも、女は女だから」
その言葉の返事は、自分の後ろから来た。
「そうですね…………女は幾つでも女。母も言ってました」
底冷えする、あいの声が、背中側から響く。
あれ?これ近くない?密着してない?
前方の虎(銀子)、後門の狼(あい)
期せずして、その間に挟まれた、八一の運命はいかに!
そう、テレビならテロップが付くような状況を変えたのは。
八一の携帯の、着信音だった。
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