第六話「実験開始」
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瞬体を振るえさせた。
「あっ、ごめん。つい力が入っちゃったよ」
「い、いえ。私は気にしていませんので…」
ルナミスさんは最初は普通の声量で喋っていたが段々と声が小さくなり最後の方はほとんど聞こえんかった。ただ、別に嫌われたとかではなさそうだな。ルナミスさんに嫌われるとスキルを無効化できないからな。…とは言え、いつまでも俺の事につき合わせるのも不味いだろうし対価として何かできる事を考えておくか。
「じゃあ、もう少しだけ付き合ってもらってもいいかな?」
「いいですよ。私もとても勉強になっていますから」
ルナミスさんはそう言って微笑む。薄っすらと頬を染めるその姿は女神と間違えても可笑しくはなかった。俺は一瞬理性が世界の果てまで消えて言った感覚に陥ったが直ぐに正気を取り戻し的に顔を向ける。そして上級魔術の術式を思い浮かべ魔力を通した。先程と同じく何時もより軽やかに魔力が集まってくる。
必要最低限の魔力が通った事で魔術が発動、先程とは比べ物にならない業火球が右手に誕生した。業火球の熱がチリチリと右手を軽く焙るように襲ってくる。火属性の上級魔術「クリムゾンスフィア」だ。今までは魔力抵抗のせいで使うことが出来なかったが今ならギリギリ発動できるか。
俺はクリムゾンスフィアを的に向けて放つ。ファイアボールより少し早い程度の速度でまっすぐに向かって行き、的に当たった瞬間周辺を火の海に変えた。
「「!?」」
俺とルナミスさんはそろって驚き思わず手を放す。周りでは燃え盛る的を見て軽く混乱が起きている様で人が集まってきている。中には水属性の魔術で消化を試みる物もいるが火は消えるどころか更に火力が上がっていく。
…そう言えば、クリムゾンスフィアは外部からの刺激があった瞬間周辺に火を広げる性質があったな。しかもちょっとした水属性魔術では消化すらできない火力を持っていたな。初めて使った事と上級魔術自体使う事が出来なかったから忘れてたわ。
結局、消化が完了したのは一時間近く経ってからだった。たまたま付近に先生がおらず生徒の魔術では餌を与えるような物でどんどん火力が上がったのが原因だな。幸い校舎や学院の外に燃え広がる事は無かったが的は全部燃え尽き暫くの間使用が禁止された。そして上級魔術を考えなしに使った俺は慌てて駆け付けたディートハルト先生にこってりと絞られることとなった。因みにルナミスさんは近くにいただけとして軽い説教だけで済んだ。よかった。不幸中の幸いとはまさにこの事だな。
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