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戦国異伝供書
第五十一話 関東管領就任その十三

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「あの御仁は大器じゃ」
「そういえば尾張は」
「まとまっておるのう」
「あの御仁の領内は見事に」
「それは何故じゃ」
「政がよいからですな」
「領内の田畑も街も道も堤も整いな」
 そしてというのだ。
「悪人は容赦なく成敗され兵も武具がよくな」
「多いそうですな」
「しかも優れた家臣がどんどん集まり取り立てられておる」
「それを見れば」
「織田殿はかなりの人物」
「だからですか」
「兵を多く揃えればな」
 そうすればというのだ。
「長尾殿とも戦える、それを言うとわしもじゃが」
「はい、当家はそこまで兵がおりませぬ」
 幻庵が言ってきた。
「残念ですが」
「うむ、長尾殿が率いる二万を相手にするにも」
「長尾殿の武勇を勘がれば」
「その三倍、六万が欲しいが」
「六万なぞ」
「今はとても」
 だからだというのだ。
「長尾殿とは戦えませぬ、今の数では」
「戦っても敗れるだけ」
「領内を荒らすこともないので」
「ならばですな」
「嵐と思い」
 そのうえでというのだ。
「今は籠城を続け」
「敵が去るのを待ちますな」
「今川殿、武田殿にも援軍を仰ぎましたし」
「うって出ねばよいですな」
「それで」
 政虎に対すると言うのだった。
「その様に」
「我等もこの小田原から一歩も出ぬということで」
「城の外の諸大名には計も仕掛けられますが」
「長尾殿に通じなければ意味がないですな」
「なら守っていればいいだけのこと」
 あくまでというのだ。
「そうしていましょうぞ」
「ですな、では」
「このまま出ませぬ」
「では殿」
 松田憲秀が言ってきた。
「城を固めておきましょうぞ」
「門を全て閉じてな」
「櫓に見張りの者を置き」
「しかと守っていようぞ」
「さすれば」
 松田は応えてだった、そのうえで。
 小田原に攻め寄せて来る政虎が率いる十万の軍勢にもうって出ることは一切せず籠城を続けていた、そしてだった。 
 晴信は甲斐において強い声で言った。
「では関東の軍勢が小田原に来ればな」
「その時にですな」
「今川殿とも文を交えて」
「そのうえでな」
 こう家臣達に話した。
「小田原に向かうぞ」
「援軍を出しますな」
「その時に」
「そうしようぞ、十万の兵といえど」
 数は多いがというのだ。
「長尾家の軍勢は二万でな」
「後の八万はですな」
「関東の諸大名の兵」
「例え長尾殿が率いていても」
「自由には動きませぬな」
「長尾殿の思う様に」
 武田家の者達もそこはわかっていた、既に。
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