第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
カンダタとの戦い
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ているのか、体は回復していても目覚めなかった。
「来てくれてありがとう。……でも、どうして?」
「……この変態に関して変な噂を聞いたからだ」
「変な噂?」
「こいつはただの盗賊じゃない。金の冠だけでなく、人身売買にも手を出してるらしい」
やっぱり……!
私やシーラを売ろうとしていたから、そんな気はしていた。
私が腑に落ちた顔をしていたからか、ユウリもなにかを察してくれたようだ。小さく安堵の息を漏らす。
……そうだ。なんだかんだで、ユウリは私たちのことを心配してここまで来てくれたんだ。
「ユウリ、あのときは……」
「ユウリちゃーん!! ごめんねぇぇ!!!」
抱きつくというより、タックルに近いだろうか。いきなり後ろから衝撃を受けて油断してたのか、ユウリは前のめりになって危うく転びそうになった。
「なんだかんだいって、やっぱりあたしたちのこと心配してきてくれたんだね!」
いつの間に目覚めたのか、タックルをした張本人のシーラが、私が今思ったことと同じ台詞をユウリに言いはなった。と、意外や意外、照れたように顔を少し顔を赤らめたではないか。まあでも、ホントに見逃しそうなぐらい一瞬だったけど。
「シーラ! 大丈夫?」
「うん!! 痛かったけどへーき!! それよりナギちん!! こんなところで寝てる場合じゃないよ、ユウリちゃんが助けに来てくれたんだよ!!」
私も未だ倒れているナギに気づき、あわてて彼のもとへ行き、ゆり起こす。呪文のおかげでダメージが回復したからか、すぐに気がついた。
「あれ……? ミオ……? カンダタは……?」
「カンダタはね、ユウリが来てやっつけてくれたの!」
私の言葉に、ナギががばっと起き出した。そして不機嫌な顔でユウリを睨み付ける。
「なんであんたここにいんの?」
「一番先にやられたバカに言われたくない」
火花、復活。私は雰囲気に耐えられず二人をなだめると、ナギも状況を把握したのかこれ以上なにも言わなかった。
「そうだ、王冠はどこにあるの?」
大事なことに気づき、私は辺りを見回した。けれど、この部屋はもともとがらんとしており、王冠どころか他に盗んだものさえない。……って、あれ?
「ねえ、カンダタが見当たらないんだけど」
さっきまでこの辺に倒れていたのに、いつの間にかいなくなっている。私を含めみんな騒然となり、あわててカンダタを探し始めた。
そのとき、ユウリが何かに気づいたように上を見上げた。
「どうやら、上の階に逃げたらしいな」
「あの野郎、往生際悪いじゃねーか!!」
そういうとナギは、電光石火のごとく部屋の奥にある階段を上った。私も追いかけようとし たが、ふとユウリが扉の前をじっと見ているのに気がついた。
「どうしたの? ユウリ」
けれど
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