第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
カンダタとの戦い
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私は意を決して、カンダタの懐に潜り込もうと突進した。
けれどカンダタは予想していたらしく、あっさりと私の腕を取り、後ろでひねるように手首を返す。
「痛っ!!!」
まさに『赤子の手をひねる』とはこのことだ。私は身動きが取れなくなり、体をもぞもぞと動かそうとした。でも体どころか指先まで全く動かすことができない。カンダタは下卑た笑いをしながら言った。
「おれも女相手に手を出すのは趣味じゃないんでな。……しかし、よく見るとこっちの女もまあまあだな」
ねちっとした嫌な笑みを浮か べながら、私を見下ろす。その口調のあまりの気持ち悪さに身をこわばらせたが、覆面をしている分まだよかったかもしれない。
「ミオちんを、放せえぇぇぇっっっ!!!」
シーラが慄きながらもこっちに向かって走ってきた。手にはなぜか巻き髪で使う金属の棒を持っており、それをぶんぶん振り回しながらカンダタにアタックしようとした。
けれどやっぱりというか、振り回していたコテをがしっと掴むと、シーラごとそのコテを扉に向かってぶん投げた。
「ひゃああぁぁぁ……」
シーラは頼りない声を上げながら、扉の向こうへと飛ばされた。そして聞こえる衝撃音。
「あんまり傷がつくと売り物にならねえからな。おっと、お前も動くなよ。大事な商品なんだからな」
売り物? 商品? いったい何の話をしているの? まさか……。
私は一瞬わけがわからなかったが、すぐに悟った。
察した瞬間、私は言いようのない不安と恐怖に襲われた。こんなところで盗賊にさらわれるなんて、冗談じゃない。私は出そうになる涙をぐっとこらえた。
けれど、ナギは攻撃を食らって倒れたままだし、もう他にカンダタに敵いそうな人なんて誰もいない。思わず目をつぶり、手下の盗賊を倒したくらいで舞い上がっていた自分を死ぬほど後悔した。
―――せっかく旅に出たのに、ユウリにも認めてもらってないのに、こんなところで 私の人生終わっちゃうの!?
ふとユウリの姿が浮かんできた。ほんの数日会ってないだけなのに、随分昔のように思える。あの毒舌も、絶対零度の視線も、もう見ることは出来ないんだ。そう思うと、なんだか無性にもう一度会いたくなってくる。
ひょっとしたら会えるかもしれない、ふと思いついて目を開けてみる。でもやっぱり彼はそこにいなかった。
そうだよね。いるわけないもん。現実を目の当たりにして、私はなんだか吹っ切れた。
「とりあえず―――しばらく寝ててもらうぜ―――」
拳を構えたカンダタの左手が動く。その瞬間、今まで出会ってきた大切なものがものすごいスピードで頭の中をよぎっていった。
―――嫌だ!! ここで終わりたくない!! 誰か助けて!! 誰か… …!!
「ユウリ――――――!!」
「アストロン」
急に声が響い
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