第2話『歪む世界』
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ドゲームはもういいだろ……」
トランプを纏めて輝橋に返す。 ふと窓の外に目を向けると、いつの間にかのどかな田舎といった風景が広がっていた。
「そういえば、北海道に来てから遠出するのは初めてか……。 こっちの方は自然が多いんだな?」
「そっか、草場は中学までは東京にいたんだっけ? こっちの方は結構キャンプとかするのに人気なんだよー。 私たちも小さい頃はよく来たし」
「お前たち、遊ぶのもいいがあと30分もせんうちに目的地だ。 いつでも降りられるようにしておけよ?」
「わかりました」
燕に促されて荷物を片付ける。 とはいえ輝橋のトランプ以外に特に何か出していたわけでもなく、各々菓子のゴミを纏めるくらいだ。
手持ち無沙汰になった玲人は窓枠に肘をついてぼんやりと外を眺める。 流れていく景色に紛れて時折窓を叩く黒い影。
「(……今日は随分と元気だな)」
普段なら意識の外に追い出せるのだが、どうにも今日は常に視界の端に影がちらつく。 まるで本格的に玲人を引きずり込もうとしているようだ。
「……どうかしたか?」
「あ、いえ……」
向かいの席で立奈が心配そうな顔でこちらを見ていたことに気づく。 今朝の事がやはり気にかかっているのだろうか。
立奈を心配させないように軽く笑顔を作ってみせる。
「あんまり深刻に思うな。 俺たちにとっては日常茶飯事だ」
「そんな……いえ、そうですか」
これは失敗だったか、立奈は顔を伏せてしまう。 だが、これ以上追及されないならそれでいい。
「おっ、虎徹山見えてきたよー」
輝橋の言葉に立奈も顔を上げて窓の外を見る。 確かに、雄大に聳え立つ山が顔を覗かせていた。 あれが虎徹山だろうか。
「次の駅で降りてしばらく歩きだね。 マイエンジェル歩ける?」
「な、なんとか……」
「途中でダウンするようなら輝橋がフォローしてやれ。 魔女を助けるのも製鉄師の仕事だ」
「はーい」
目的地を目の前にして興奮したのか、立奈の顔から先ほどまでの暗い表情が消えていた。 とりあえずは良かったと思い、窓の外へと目を向ける。
相変わらずそこには、漆黒の影があった。
……
…………
………………
「やぁ、君から連絡してくるなんて珍しいじゃないか?」
……
「なんだその話か、ニュースで見たよ。 コメンテーターって人種は相変わらず好き勝手言うね?」
……
「わかってるさ。 聖晶の教員連中にも注意するように言ってる」
……
「……何?」
……
「……本当なのかい?」
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